「いいよ、相手してやろう、志築」

真遥が、ゆっくりと右掌に霊刀白夜(びゃくや)を携えた。

「志築!落ち着け!」

「……離せ、康介!」

「志築、だめだ!お前はっ」

「康介っ!いいか、隙みて冴衣連れて逃げろ、誰も死なせるなっ」

康介の手を振り切ると、俺は駆け出した。


真遥の背中が盛り上がると、羽のように無数の手が伸び出る。悍ましいほどの霊力が湧き出るようにして真遥を包み込む。


ーーーーこの霊力は、ヒトのそれじゃない。異質のモノだ。


「……お前……禁忌、犯したのか……」

「あはははは、神になるためだよ」

「……神の、なりそこないだな!」 

真遥の背中の無数の手の先がぐちゃりと変形し人型の化物と化す。

「康介っ!」

「わかってる!」

康介が、霊刀雪柳を地面に突き刺すと結界を発動させる。

目の前の真遥から、霊力の塊が発せられる。
銀河で受けるが、手元に迫り上がるような圧迫感と霊力のぶつかりで手先が痺れる。


(くっ…ものすごい量の影だ)


俺は、地を蹴り上げ、真遥の間合いへと入り、銀河を降り下ろす。