「……そうだ、母さんも黒い瞳だった。眼も潰しておきたいところだが、そうなると僕が見えなくなるからね。」

何を……言っているのだろう。この男はとうにヒトじゃない。神になりそこなった化け物だ。……志築は、きっとここに向かってる。

来ちゃダメだと行っても来るのだろう。志築が来るまでに、私が……。


「こうやって貼り付けにされて両手を釘で打たれたらしいよ」

左の掌に真遥の右掌の人差し指が、突き刺さる。

「ああああーーーーっ!」
 
人差し指を引き抜かれると鮮血が溢れて滴り落ちた。

「いい声だね」

「はぁっ……はぁっ……はっ……」

丁度いい……私の血は、もう充分。あとは……どうする。

再び真遥と目が合ったかと思うと、口の中で真っ赤に染まった布が、真遥の指で取り出された。

「げほっ……けほっ……はぁ、はっ……」

「……礼衣がなんで、死んだか最期に教えてあげるよ。」

「……はぁっ……あんたが……殺したんでしょ。……理……由なんてどうでも…いいっ」

口内は、飲み込んでも飲み込んでも、血が溢れてくる。

「……殺すつもりはなかったよ、ただ……ちゃんとした器ではなかった。……それだけだよ」

銀の瞳は無機質な色を湛えて、血に塗れた右掌で、私の頬に触れる。その瞬間に、自分の中に、激しい怒りと憎悪が、燃え上がる様に湧き出すのが分かった。