ーーーー私は、ふと、志築の顔を思い出す。

いつも私は怒ってばかりだった。もう少しだけ、志築の前で笑っておけば良かったのかも知れない。そうすれば、私が居なくなっても志築は少しはラクだったかもしれない。

私に何かあれば、志築はまた自身を責めるのだろう。礼衣の時と同じように。そんな必要など何もないのに。
 
『冴衣はさー、一応女の子なんだからさ、怪我とかしないで欲しいんだけどね』 


そう言って私の髪をくしゃっと撫でる。 

志築は優しい。優しすぎるほどに。御津宮当主として、もっと、私を利用してもいいのに、自ら汚れることを選ぶから。

私は命など、惜しくない。

志築が救われるなら、それが私が封印師として、礼衣の代わりに志築の側にいる意味だと思うから。