「もう結界張る?」
志築が、私の頭に手で触れた。身体中を覆っていた黒い膜のようなものが、スルスルと剥がれていく感覚があった。
「……だ、大丈夫だから」
私が、押し返した掌を、志築は、あっさりとひっこめると、呆れたような顔をした。
「なんでそう、素直に甘えられない訳?」
「そうゆうんじゃない」
「あっそ」
いま結界を張って外部からわからないようにしても良いのだけれど、できれば影を中心として張った方が効果が高い。それに、志築の掌に触れられると、何故だか胸がザワザワとして落ち着かないから。
「あとで、公園全体に結界張るから、その方が効果的だし」
「はいはい。でもさ、冴衣は、俺より感覚が鋭いんだからさー、影の濃度濃すぎて、ちょっとしんどいだろ?さっきのカイロ貸して」
志築は、私からカイロを奪い取ると、両手で包み込むようにして言霊を唱えた。
それをそのまま、私の黒のロングコートのポケットに入れる。
ーーーーすぐに、じんわりとカイロの熱と共に志築の簡易結界に包まれて、息苦しさから解放されるのが分かった。
「……あ……りがと」
「へぇ……お礼はちゃんと言えるんだ」
「……っ、そーゆー言い方が嫌なの!馬鹿!」
私、ぷいっとそっぽを向いた。