「……兄さま。あの、ごめんなさい」
「……那智のせいじゃねえ。やっぱり警察なんざクソだな」
警察署に三時間ほど滞在した俺は、すこぶる機嫌を悪くしていた。その不機嫌具合は那智が半べそになるほど。
那智のせいじゃない。まじで、那智のせいじゃない。悪いのは警察畜生の方だ。
何なんだ。相談に行ったら、ずいぶん待たせられた挙句、会議室で待っていた初老の下っ端っぽい警察二人が早々に「タチの悪い悪戯ですね」だと言って来やがる。
あほか。悪戯で大量の写真を送る馬鹿がどこにいやがるってんだ。しかも一週間、律儀に写真を送る悪戯するってか?
性的な目で見られている、セクハラカードまで証拠として見せたのに、あいつらときたら爆笑しやがる。
こっちは真剣に困ってるっつーのに、びくびく怯える那智を見て、「学校でいじめられているのかい? お母さんや担任の先生に相談してみてごらん」だぁ?
こちとら、それができないから警察のお前らに相談しているだろうが! 空気を読め!
(あくまで自分達の仕事じゃねえって言い張るんだな。人見知りが激しい那智が、頑張って追い駆け回された話を懇切丁寧にしてやったのに……くそがっ!)
俺は携帯を取り出し、起動していたアプリを停める。
覚えてやがれ。てめぇらの音声は全部この中に記録してやったからな。後でほえ面かくなよ。
「警察の人、信じてくれなかったですね。とても悲しい気持ちになりました」
しょんぼりと落ち込む那智は、俺の警察嫌いに理解を示した。あれは嫌いになると強く頷き、もう行かなくて良いと俺に笑ってみせる。
「その内、飽きてどこかへ行くと思います。それまで我慢しますよ」
「何か遭ってからじゃ遅ぇよ。一応、明日も足を運んでみよう。あの変態様のことだから、またポストに写真を入れてくるだろう」
俺の予感は的中する。
翌日の朝の郵便受けに、新しい封筒が入っていた。
中身は焼き回しの写真、じゃなく、昨日外出した那智の写真。あの後、苛立つ気持ちを発散させるために、二人で外食したんだが、苺パフェに目を輝かせている弟が写っていた。
これには、さすがに俺も那智も気味が悪いと思わざるを得ない。
「すぐ近くにいたんですかね。しかもこれ、お店の中ですよ」
つまり、犯人は客として俺達をつけていたことになる。まさにストーカーだな。ますます那智を一人にできねえ。