いつもそうだ。那智だけが、俺の弱い心を受け止めてくれる。呆れもせずに我儘を聞いてくれる。傍に居てくれる。
「誰にも取られたくない」「うん」「俺はひとりになりたくない」「うん」「もうひとりはいやだ」「うん」
「他人にお前を奪われるくらいなら」
「その時は、おれを部屋にでも閉じ込めてください」
「いいのか」「いいです」「嫌わない?」「嫌うわけがないです」「ひどいことなんだぞ」「兄さまが、今までおれにひどいことをしました?」「悪いことなんだぞ」「ただ、おれを閉じ込めているだけ。なにも悪くないですよ」
「那智はいつまでも俺の傍にいてくれる?」
「傍に居ます。お約束です」
「閉じ込めてもいい?」「いいですよ」「嫌わない?」「大好きです」
延々と繰り返される会話は、俺の気が済むまで続けられた。
これが異常な会話だって分かっていながら、からっぽの心が腹いっぱいになるまで、俺は約束を結んでくれる弟の愛情を貪った。