【3】


 鳥井さんに攫われて三日目。

 四六時中、車内で過ごすことがしんどくなったのか、鳥井さんはおれを連れて朝の六時からホテルに向かった。そこはただのホテルではなく、ラブホテルと呼ばれている……まあ所謂大人向けのホテル。

 だけど鳥井さん曰く、今どきのラブホテルは性行為目的以外にも『休憩所』として、部屋を提供しているサービスしているのだと教えてくれた。
 つまり泊まるほどではないんだけど、数時間どこかでゆっくり過ごしたいよね、という時にラブホテルは最適らしい。利用したことないおれにとっては、今どきも昔もよく分からないけど……。

 ちなみにラブホテルは未成年者利用禁止。
 だけど自分達が利用するラブホテルはフロントを通さずに部屋を借りれるシステムがあるから、中学生のおれを連れても誤魔化せるだろう。大丈夫だろう。金さえ払えば良いだろう、と鳥井さんは言っていた。

 当たり前だけど、それは犯罪じゃないのかな。
 いや、鳥井さんはすでに犯罪者。『通り魔』で『人攫い』で無理やり触ってきた『変態』の犯罪者だから、べつのいいのかな? ……うーん、たぶん良くはないんだろうけど。

「半日この部屋で過ごす。お前はあそこのベッドで寝てろ」

 大きなベッドやソファー、お洒落なランプが目立つ部屋に入ったおれは、鳥井さんからベッドで寝てろ、と命令を受けた。
 昨晩の出来事でより従順でおとなしくなったおれは、しごく鳥井さんに怯えながらも、うんっと小さく頷いて言われた通り、ベッドに乗ると隅っこで寝転んで身を丸くした。逃走防止のため両手足に手錠を掛けられたけど、おれは抵抗を見せず、ただただそれを見守っていた。

 車内にいる間、常に両手には手錠を掛けられているんだけど、両足は寝る時にしか掛けられない。たぶん一々手錠を外す作業が面倒なんだと思う。両手だったら服で隠せるけど、両足はズボンで隠すことはできても、動きがぎこちなくなるのは必須だしね。用を足す度に手錠を外すのも面倒そうだしさ。

 でもいま両足に手錠を掛けているということは、部屋から逃げられることをつよく警戒している証拠だと思う。

「いいか。許可なくベッドから下りるんじゃねえぞ」

 うん、おれは一つ頷く。
 逆らえばどうなるか分かっているよな、と聞かれると、おれはまた一つ頷いた。軽く首を触られると、激しく頭を横に振った。触られたくないと体を小刻みに震わせ、態度で気持ちを示した。

 スタンガンを翳しても、ここまで怯える態度を見せなかったおれに、「分かっているならいい」と言葉を残して鳥井さんはベッドから下りていく。

 向かった先は洗面所。お風呂に入るみたいだ。