「下川?」


 様子がおかしいと思ったのか、福島が俺の隣に並んでくる。
 ニュースに釘づけになっていることに気づき、いっしょにニュースを観始めた。
 それは大したニュースじゃなかった。なんでも病院に発煙筒が持ち込まれたらしく、病院内に白煙が立ち込めたことで、火事だと誤認する騒動があったそうな。医者や看護師、患者は避難したものの、大事に至ることはなかったらしい。警察は悪質ないたずらとして捜査を進めるそうだ。

 良かった、大ごとになっていないなら、きっと那智も……那智も……無事なんだよな。

「下川、携帯が鳴っているわよ」

 福島の呼びかけによって、我に返った俺は急いで携帯を取り出す。
 那智からの連絡を期待したが相手は『益田清蔵』。早鐘のように鼓動が鳴る。嫌な予感がした。震えそうになる指で画面をタッチし、電話に出ると益田が焦燥感を滲ませながら、俺に伝えてきた。


『下川の兄ちゃん、いいか。落ち着いて聞いてくれ。坊主が消えちまった。病院のどこにもいねえ』


 ――……那智が、消えた?