「何か買ってきてほしいものはあるか? 遠慮するな」

 すると那智はうれしそうに声を弾ませながら、メロンパンが食べたい、と甘えてきた。

『兄さま、半分こしましょ』

 半分こしたい、か。
 一個丸々食ってもいいのに、お前は本当に変わらないな。実家にいた頃から全然変わっちゃねえ。半分こして食べるのが大好きな弟に自然と笑みがこぼれてしまう。那智のおかげで元気が出てきたよ。
 
「那智」
『はい』
「お前は俺の傍にいろよ。昔も今も、これからも」

 他人の感情を気持ち悪いと思って吐いちまった俺には、もうお前しかいない。
 ほんと他人の好意は気持ちが悪い。

『じゃあ早く帰ってきてくださいね。おれ、さみしいです。いまのおれは自分から兄さまの傍には行けないんですから』

 いつか、お前も同じ気持ちになってほしいよ。那智――ちげえ、俺が教えなきゃな。他人の好意は気持ち悪いって。教えなきゃ。兄さまが教えなきゃな。

 俺はご機嫌に電話を切り、昼飯は何を食べようか、と思案を巡らせる。
 不本意だが吐いちまったから、軽めなものにするかな。うどんにすっかな。そうだ、コンビニに寄る前に那智の携帯を取りに行くか。ストーカー野郎の動きが見えなくなった以上、アパートに放置する理由も無くなったしな。

「ん?」

 メッセージアプリにバッジが表示されている?
 俺は「1」と表示されているメッセージアプリを起動させて、送り主を確認した。

 その名前にしばらく固まってしまう。

『あんたの本当の連絡先は、これで合っているわよね?』

 そしてメッセージの内容にも。

『下川、あんたと話がしたい。どこで連絡先を手に入れたか知りたいでしょう? あたしも知りたい、那智くんのことを――だから話しましょう。二人っきりで』

 それは俺の連絡先を知る由もない、福島朱美からのメッセージだった。