「えっと……タナトスが、僕の影になると不都合は、ないんですか?」

僕は、おずおずと訊ねた。タナトスの放つ異質なオーラに気圧されながらも、やはり、契約を交わすからには、デメリットは、聞いておかなければならない。

『お前の影の形が、俺になる、というだけだ。そのかわり二度と俺から、離れることはできないがな。でも、たったそれだけで、お前の願いを叶えてやるのだ。なんなら、なるべく人目につく時は、お前の影の形を真似てやろう』

僕の影の形がタナトスになり、タナトスと僕はずっと一緒ということか……。成程……。影を取られるのは正直言って、薄気味悪いが、いまの僕が置かれてる日常に比べたら、影なんて安いものだ。

僕は、大きく頷いた。

「お願いします。僕と契約して、僕の願いを叶えてください」

『では、契約を交わそう』

タナトスはそう言うと、僕の影を鎌で刈り取り、くしゃくしゃ丸めて、口に放り込み、ジャリジャリと咀嚼した。

「わっ、凄いですね!鎌で影を切り取るなんて……」

そしてタナトスが、僕の足元に自身の足元を重ねると、あっという間に吸い付くようにして、僕の影へと変化した。

『ふふふ……この鎌でしか、影は切り離せないんだよ』

不思議な事に、タナトスが、僕の影に形を変えてから、僕の耳の内側から、脳に向かって直接、タナトスの声が響いてくる。

『さぁ、お前の願いを叶えにいこう。まずはどうしたい?』

僕は、すぐに願いを口にした。