次の舞踏会の日が来た。
リンファスのことを知りたいと言ったロレシオのことを考えると、お腹の底がそわそわした。
落ち着かなくて、プルネルにどうしたの、と問われてしまったほどだ。
何でもないと応えたけど、プルネルはリンファスを気にしたような視線を送ってくる。
どうしよう。プルネルに言ってしまおうか。
でも、なんて言ったら良いんだろう?
自分のことを知りたいなんて言われたことが初めてで、何を聞かれるんだろう、答えられるだろうか、とそんな心配ばかりしている。
自分のことで知っていることなんて片手で足りるほどだ。
誰にも見向きもされなかったこと、ファトマルから与えられた仕事さえ満足に出来なかったこと、不景気な顔、貧相な体、どれを取っても彼が聞いて楽しい話ではない。
そんなことを聞かされたロレシオがリンファスに『興味』を失ったら、この花もまた落ちるのだろうか……。そう考えると気持ちが沈む。
当たり前の結果ではあるが、一度咲いた花が着かなくなるというのは、甘いミルクティーの味を知ったのに、金輪際飲ませてもらえないことと似ている。
実際、今まで食べていた『同情』の花よりも、『興味』の花の方が甘い。
この味を知ってしまったら、あれ程美味しく感じた『同情』が味気なかったと思えるほどだ。
ウエルトの村では野菜スープだって飲ませてもらえないこともしばしばだったのに、贅沢になってしまったと感じる。それが恐ろしい。
贅沢という感覚は、自分には分不相応な感覚だと思うのだ。この感覚に足元を掬われないようにしないと、と思う。
(……だって私は出来損ないで役立たずなんだもの……)
リンファスは自分の立場を良く分かっていた。