それでも、リンファスにアキムとルドヴィックの花が着くことはなかった。
彼らが言っていた通り、まだ彼らにとってリンファスは、『新しく現れた訳あり花乙女』としての存在以上ではないのだ。

今日会ったばかりなのだから、当たり前だ。
リンファスは、自分と屈託なく話をしてくれる男性が居たという事に驚きを持ちつつ、それも、花乙女の役割を期待されてのことなのだろうなと理解した。

そういえば、ロレシオもあの髪の色はイヴラなのではないだろうか。
そう思ったけど、彼の美しい淡い金色の髪を、とうとう茶話会の最中に見ることはなかった。

乙女とイヴラが去った部屋では、ケイトとハラントが片付けに大わらわだ。
リンファスも手伝おう、と思って席を立とうとすると、ぽん、と肩を叩かれた。……プルネルだった。

「どうだった? 初めての茶話会……」

「あ、……そうね、人が、多かったわ……」

それは感じたことだったので、嘘ではない。
でも考えていたこと全部でもないので、リンファスは知らず口を閉ざしてしまう。プルネルは何時も通り穏やかな笑みを浮かべてリンファスの隣に座った。

「……? プルネル……?」

「よかったら、少しこのまま、お話しない? 貴女やっぱり初めで緊張したのかしら、ちょっと元気がなかったから、気になっていたの……」

ごめんなさい、気付いたときに、声を掛けられなくて……。

プルネルは呟くようにそう言った。

……プルネルの心遣いが嬉しい……。人と会って、心を通わせるということは、こんなにも嬉しいことなのだと知ったリンファスは、プルネルに向かって微笑んだ。

その瞬間にプルネルの手首に新しい小さな紫の花が咲いて、プルネルは嬉しそうにそれを見た。

「ふふ。リンファスも私の事友達だと思ってくれたのね」

そう言って手首の花をリンファスに見せる。

「これは貴女からの花だわ。紫の花ですもの。それに今、私は貴女とお話してたんだし」

なんていうことだろう。リンファスに花を咲かせることが出来るだなんて!

ぱちぱちと瞬きをしながらプルネルが示して見せる花をまじまじと見える。

「嬉しいわ。ありがとうリンファス」

微笑むプルネルに、心が震える。




わたしの、初めてのお友達……。




リンファスはプルネルの手を取って、何時までも握っていた。