「新しい自衛の村?」

ロレシオは聞いたことのない話をルドヴィックから聞いていた。
心当たりがあると言ってハティ領についての話をルドヴィックがしていた。

「そうだ。
港から外れた崖を背中に小さな自衛の村が出来ているんだ。自ら自衛団を持ち、柄の悪い連中が集っていると、近隣の村から報告が上がっている。
ただ、その連中が何か領地内で問題を起こしたわけでもないから、こっちも干渉できなかった。税もちゃんと収めていたしね。
ただ、その産業は明らかになっていなかったんだ。土地自体は潮風に当たるやせた土地で作物が育つとは思えない。
かといって海側は崖だから船が着く場所もないと思っていたんだが……」

その村が海賊を匿っているのなら、セルジュの取引が妨害された理由も頷ける。
同じ領地内でなら、何処の家が何処の船と交易しているかなんてすぐに分かるだろう。

「自衛団を持っているなら、お行儀よく『ごめんください』も通用しないんだな」

アキムが忌々し気に吐き捨てる。リンファス誘拐と不正取引との二重の嫌悪で、苛立っているようだった。

「いいじゃないか。こちらが、より腕が立つことを実践で証明すればいいだけのことだろう?」

そうって不敵に笑ったルドヴィックは、普段の温厚な彼からは想像もつかないような好戦的な炎を瞳に燃やしていた。

「イヴラとしてインタルに集められて、若干腕の振るいどころがなかったところだからな。僕も自分の腕が海賊相手にどこまで通用するのか、試したいね」

口端を吊り上げるアキムも、やはりプルネルやリンファスの前で笑みを見せたアキムではなかった。
三人とも、彼らの行いに怒っていた。友人として、想う相手として、大切な人を失う訳には、断じていかなかったのである。