「お願いだから、それ以上、僕の友達を貶さないでくれ。大事な……友達なんだ。……とても。……君には、分からないだろうけれど……」
友達、と言ったのが、自分のことを指しているのだと、リンファスは分かった。
リンファスにとって自分なんて何の価値もない人間だったが、それを言ってはいけないらしい。
……どうして?
「君がそう言う発言をするのは、君が本当の意味で僕を生きていく証として認めていないからだろう?
僕のことを、本当に君の生きる証にしてくれたなら、今君の口からそんな言葉を聞かなくて良かったんだ」
……どういうこと? ロレシオの言いたいことが分からない。
「わ……、私だって、貴方を証にしても良いくらいの人間になりたいと思っているわ……。本当よ。あの時言った言葉は、嘘じゃないわ……。
……でも、今はまだ私は至らないことだらけで、釣り合わないことが多すぎるわ……。だから私……」
恐る恐る言葉を紡ぐと、ロレシオは少し雰囲気を和らげて、すまなかった、と謝罪してくれた。
「大事な友達を傷付けられることは、……とても辛いことなんだ……。
君も、同じ花乙女の友達に置き換えて考えてみてくれないか。彼女が君に対して自分を卑下したら、どれだけ君は辛い思いをするだろう。
それと同じことを、君は今、僕にしたんだ。
君が自信を持てないのは十分理解しているよ。お父上の呪縛はとても強固だ。
それでも、あの時、これからの証を僕に見てくれると言ったのなら、君は僕に対して、君を傷付けてはいけない……。
僕が、君に対して僕自身を傷付けないように」
友達だから……。生きる証として居てくれる存在だから……。
だからその大役を請け負ってくれたロレシオを、傷付けるような人間であってはならない。
頭の悪いリンファスに、丁寧に言葉を重ねてそう教えてくれたロレシオに、感謝する。
思いやりが巡る。
ロレシオがリンファスを思い遣ってくれたことで、リンファスが気付けたこと、知ったこと。
それをいずれ、ロレシオに返せたら良い。リンファスが今感じた、震えるくらい嬉しい気持ちをそのままに。
「……私、……花以外で、貴方に喜んでもらえるような人間になりたいわ……」
自分の為に言葉を尽くし、心を掛けてくれるロレシオに、そう思う。
この込み上げる想いを、花で表現できたら良いのに……。
「やっぱりイヴラって、ちょっとずるいわ」
すねてリンファスが口を尖らせると、ロレシオはやっと笑ってくれた。
「でも、乙女が想いを受け取ってくれなければ、花は咲かない。
だから花が咲くのは、お互いの意思が通じている証なんだよ。
僕と君の間で、気持ちが通じている証だと思うから、この花を僕は誇りに思うよ」
ゆるりとした笑みを浮かべたままのロレシオが、リンファスの胸の花をするりと撫でる。ひらひらと花弁を靡かせる蒼の花は、ロレシオに触られて嬉しそうだ。
「ふふ……。花が嬉しそうだわ」
「すごいな、そんなことも分かるの?」
驚いた様子のロレシオに、そう感じるだけよ、とリンファスは言った。
「でも、私も嬉しいもの。ロレシオの友達で居られて、とても嬉しいわ」
微笑んでそう言うと、ロレシオの口許が満足そうに弧を描いた。
友達、と言ったのが、自分のことを指しているのだと、リンファスは分かった。
リンファスにとって自分なんて何の価値もない人間だったが、それを言ってはいけないらしい。
……どうして?
「君がそう言う発言をするのは、君が本当の意味で僕を生きていく証として認めていないからだろう?
僕のことを、本当に君の生きる証にしてくれたなら、今君の口からそんな言葉を聞かなくて良かったんだ」
……どういうこと? ロレシオの言いたいことが分からない。
「わ……、私だって、貴方を証にしても良いくらいの人間になりたいと思っているわ……。本当よ。あの時言った言葉は、嘘じゃないわ……。
……でも、今はまだ私は至らないことだらけで、釣り合わないことが多すぎるわ……。だから私……」
恐る恐る言葉を紡ぐと、ロレシオは少し雰囲気を和らげて、すまなかった、と謝罪してくれた。
「大事な友達を傷付けられることは、……とても辛いことなんだ……。
君も、同じ花乙女の友達に置き換えて考えてみてくれないか。彼女が君に対して自分を卑下したら、どれだけ君は辛い思いをするだろう。
それと同じことを、君は今、僕にしたんだ。
君が自信を持てないのは十分理解しているよ。お父上の呪縛はとても強固だ。
それでも、あの時、これからの証を僕に見てくれると言ったのなら、君は僕に対して、君を傷付けてはいけない……。
僕が、君に対して僕自身を傷付けないように」
友達だから……。生きる証として居てくれる存在だから……。
だからその大役を請け負ってくれたロレシオを、傷付けるような人間であってはならない。
頭の悪いリンファスに、丁寧に言葉を重ねてそう教えてくれたロレシオに、感謝する。
思いやりが巡る。
ロレシオがリンファスを思い遣ってくれたことで、リンファスが気付けたこと、知ったこと。
それをいずれ、ロレシオに返せたら良い。リンファスが今感じた、震えるくらい嬉しい気持ちをそのままに。
「……私、……花以外で、貴方に喜んでもらえるような人間になりたいわ……」
自分の為に言葉を尽くし、心を掛けてくれるロレシオに、そう思う。
この込み上げる想いを、花で表現できたら良いのに……。
「やっぱりイヴラって、ちょっとずるいわ」
すねてリンファスが口を尖らせると、ロレシオはやっと笑ってくれた。
「でも、乙女が想いを受け取ってくれなければ、花は咲かない。
だから花が咲くのは、お互いの意思が通じている証なんだよ。
僕と君の間で、気持ちが通じている証だと思うから、この花を僕は誇りに思うよ」
ゆるりとした笑みを浮かべたままのロレシオが、リンファスの胸の花をするりと撫でる。ひらひらと花弁を靡かせる蒼の花は、ロレシオに触られて嬉しそうだ。
「ふふ……。花が嬉しそうだわ」
「すごいな、そんなことも分かるの?」
驚いた様子のロレシオに、そう感じるだけよ、とリンファスは言った。
「でも、私も嬉しいもの。ロレシオの友達で居られて、とても嬉しいわ」
微笑んでそう言うと、ロレシオの口許が満足そうに弧を描いた。