「そ、そうね……。真っ白いパンって、どうやって焼くのか、まず興味があるわ。
それに、混ぜ物のあるパンだなんて、初めて聞いたわ。インタルではよく売っているの?」
「いや、僕も混ぜ物のあるパンは初めて聞いたな……。
どうだろう、一つ買ってみないかい? お祭りらしく、食べながら歩こう」
ロレシオの提案は、何とも楽しそうだった。
リンファスが喜んでこくこくと頷くと、ロレシオは人だかりの中に入って行って、少ししてから手に紙袋を持って戻って来た。
「凄いな。まだあたたかいよ。テントの奥に小さな石窯を持っていた。
きっとキャラバンが持つ調理道具の一つとして使ってるんだろうね。
あんなに小さな窯は見たことがなかったな。旅をするというのも、工夫の連続なんだろうと思うと、彼らの発想には驚かされるな」
ロレシオはそう言って、紙袋の中から白くて丸いパンをリンファスに渡してくれた。
本当だ。まだほのかにあたたかくて、冬だったら湯気が出たかもしれない、というあたたかさだった。
リンファスは両手でパンを持ち、はむっと白い表面に食いついた。
ふわふわの食べ心地。舌に当たった生地がほろほろとほどけていく感触。そして齧ったところからじわりと溢れる、甘くて卵色のクリーム。
これは、人間の食べ物としては、かなり美味しい。茶話会で出るケーキやスコーンよりも、あたたかい分美味しさが増していた。
「すごい! こんな食べ物、初めてだわ!
この卵色のクリーム、滑らかでとてもやわらかいのに、パンから零れ落ちないのが不思議!
これは……ミルクと砂糖なのかしら? 初めて花茶を飲んだ時の味に似ているわ。
それにパン生地! パンって、こんなにふわふわに軽く焼けるものなの? 窯で焼いているんでしょう? とても不思議だわ!」
興奮した様子でパンの齧り口から覗く卵色のクリームを見ているリンファスの横で、ロレシオもまた、白いパンを頬張る。
「へえ、本当だ。こんなパンは初めて食べたな……。
このパンをインタルのパン屋で売ったら、かなりお客が集まるんじゃないかな。
まず、パンにクリームを閉じ込めようとした発想が凄い。それに、焼き色がついていない白いパンというのも、珍しいからね」
ずっとインタルに居るロレシオでもそう言うのなら、本当に珍しいパンなんだろう。
リンファスはもうひと口はむっとパンに齧りつき、中に閉じ込められたクリームを頬張った。
「本当に不思議なパンだわ……。花のように甘いパン……。ああ、とっても不思議!」
夢中で白いパンを食べていたら、ふとロレシオがリンファスのことをじっと見た。
「なあに? ロレシ……」
「はは。リンファス、クリームがついてしまっているよ。これは食べるのが難しいから、仕方ないね」
ロレシオはそう言って、リンファスの口許を親指で拭った。
ほら、と見せてくれるロレシオの親指には、卵色のクリームがほんのひと欠片。
しかし、明らかにサラティアナやプルネルがしなさそうな失敗をしてしまい、リンファスはその場で恐縮した。ウエルトで見たことのある、幼子が母親に世話を焼いてもらっている状態と、まるで同じだった。
「ご……っ、ごめんなさい、ロレシオ……。子供みたいね、私……」
ロレシオからは、そうだね、子供のように世話が焼けるね、そういう呆れた言葉が返ってくるのだと思っていた。
しかしロレシオは指についたクリームをぺろりと舐めると、これで一緒だ、と楽しそうに笑った。
それに、混ぜ物のあるパンだなんて、初めて聞いたわ。インタルではよく売っているの?」
「いや、僕も混ぜ物のあるパンは初めて聞いたな……。
どうだろう、一つ買ってみないかい? お祭りらしく、食べながら歩こう」
ロレシオの提案は、何とも楽しそうだった。
リンファスが喜んでこくこくと頷くと、ロレシオは人だかりの中に入って行って、少ししてから手に紙袋を持って戻って来た。
「凄いな。まだあたたかいよ。テントの奥に小さな石窯を持っていた。
きっとキャラバンが持つ調理道具の一つとして使ってるんだろうね。
あんなに小さな窯は見たことがなかったな。旅をするというのも、工夫の連続なんだろうと思うと、彼らの発想には驚かされるな」
ロレシオはそう言って、紙袋の中から白くて丸いパンをリンファスに渡してくれた。
本当だ。まだほのかにあたたかくて、冬だったら湯気が出たかもしれない、というあたたかさだった。
リンファスは両手でパンを持ち、はむっと白い表面に食いついた。
ふわふわの食べ心地。舌に当たった生地がほろほろとほどけていく感触。そして齧ったところからじわりと溢れる、甘くて卵色のクリーム。
これは、人間の食べ物としては、かなり美味しい。茶話会で出るケーキやスコーンよりも、あたたかい分美味しさが増していた。
「すごい! こんな食べ物、初めてだわ!
この卵色のクリーム、滑らかでとてもやわらかいのに、パンから零れ落ちないのが不思議!
これは……ミルクと砂糖なのかしら? 初めて花茶を飲んだ時の味に似ているわ。
それにパン生地! パンって、こんなにふわふわに軽く焼けるものなの? 窯で焼いているんでしょう? とても不思議だわ!」
興奮した様子でパンの齧り口から覗く卵色のクリームを見ているリンファスの横で、ロレシオもまた、白いパンを頬張る。
「へえ、本当だ。こんなパンは初めて食べたな……。
このパンをインタルのパン屋で売ったら、かなりお客が集まるんじゃないかな。
まず、パンにクリームを閉じ込めようとした発想が凄い。それに、焼き色がついていない白いパンというのも、珍しいからね」
ずっとインタルに居るロレシオでもそう言うのなら、本当に珍しいパンなんだろう。
リンファスはもうひと口はむっとパンに齧りつき、中に閉じ込められたクリームを頬張った。
「本当に不思議なパンだわ……。花のように甘いパン……。ああ、とっても不思議!」
夢中で白いパンを食べていたら、ふとロレシオがリンファスのことをじっと見た。
「なあに? ロレシ……」
「はは。リンファス、クリームがついてしまっているよ。これは食べるのが難しいから、仕方ないね」
ロレシオはそう言って、リンファスの口許を親指で拭った。
ほら、と見せてくれるロレシオの親指には、卵色のクリームがほんのひと欠片。
しかし、明らかにサラティアナやプルネルがしなさそうな失敗をしてしまい、リンファスはその場で恐縮した。ウエルトで見たことのある、幼子が母親に世話を焼いてもらっている状態と、まるで同じだった。
「ご……っ、ごめんなさい、ロレシオ……。子供みたいね、私……」
ロレシオからは、そうだね、子供のように世話が焼けるね、そういう呆れた言葉が返ってくるのだと思っていた。
しかしロレシオは指についたクリームをぺろりと舐めると、これで一緒だ、と楽しそうに笑った。