プルネルは少し声を弾ませてリンファスの手をきゅっと握った。

「腰まである貴女の髪の毛に隠れてしまって見えにくかったけど、貴女、花が新しく着いたのね!? 見せて欲しいわ!」

そう言ってプルネルは腰を折ってリンファスの体の左側を見た。其処には確かに小さな蒼い花が咲いており、プルネルはそれを見て目を輝かせた。

「素敵! 胸の花に続いてまた新しく花が着いているわ! 胸の花も変わってしまっていて、少し気になっていたの。この花の贈り主の方は、貴方のことをまた一つ知ったのね!」

自分の事じゃないのにこんなに喜んでくれるプルネルに、リンファスは心が溢れる思いだった。
この『友情』の気持ちをどうやって伝えたら良いのだろう。プルネルの手首の花は今までと同じように咲いているだけで、この感謝を伝えきれていない。

「プルネル……。そんなに私のことを気に掛けてくれてありがとう……。私、インタルに来て一番良かったことは、貴女に会えたことだわ……」

リンファスは感動してそう言うと、ちょっと待ってて、と言って慌ててプルネルの部屋を出た。
自分の部屋に戻り、テーブルの上のハンカチを持って取って返すと、プルネルの部屋を訪れる。

「わたしね……、貴女に色々助けられているの。最初に話し掛けてくれた時から、ずっとよ……。
私の花は貴女に咲いたけど、それから全然変わらなくて、ちょっと心配で……。
だから……、なんて言ったらいいのかしら、私も貴女が気に掛けてくれるくらい、貴女の事大好きって伝えたくて……」

そう言って、手に持っていた菫の刺繍を刺したハンカチをプルネルに差し出した。

「貴女に似合えばいいなって思って刺したの。良かったらもらってくれると嬉しいわ……」

「まあ、リンファス! こんな素敵な贈り物、私、初めてよ!」

小さな菫が描かれたハンカチを手に取るプルネルが、嘘偽りなく喜んでくれているようで、リンファスは少し安心した。

「以前、ルロワさんのお店に行った時に、素敵な菫の刺繍を見たの。あんな風には刺せなかったんだけど……」

あの素晴らしい刺繍を思い出すと、いま渡したハンカチの刺繍は拙いと思う。それでも、リンファスの気持ちを表すにはこれしかなかった。
刺繍の出来に自信が持てずにいたリンファスに、プルネルはあたたかい声で語り掛けてくれる。

「リンファス、違うのよ。私が嬉しいのは、貴女が私の為に使ってくれた気持ちと時間というこの刺繍なの。貴女の時間と心がこもったこの贈り物、大事にするわ」

リンファスの気持ちを全く間違えずに理解してくれるプルネルを大切だと思う。リンファスは満ち足りた気持ちでありがとう、と微笑んだ。