「地神って、国津神(くにつかみ)の方だよね?」

私の問いに、白ちゃんは肯く。

神話の神には分類があり、天孫降臨以前から土着の神としてあった地神が国津神、天照大神(あまてらすおおみかみ)など高天原(たかまがはら)にある神を天津神(あまつかみ)という。

『津』とは現代語の『の』の意味で、現代語に直せば『天の神』『国の神』ということになる。

他の言い方では天津神を『天神(てんじん)』、国津神を『地祇(ちぎ)』ともいい、あわせて『天神地祇』、または『神祇(じんぎ)』ともいう。

「ここは『せいりょう』の名を冠しているが、陵(みささぎ)の文字が入っているように墓があった場所だからな。見張り役というと難だが、抑え込む存在が必要だったようだ」

陵とは、古くは『みさざき』とも言われ、天皇や皇后、三后の陵墓(りょうぼ)、墓のことをさす。

ここにそのものがあったわけではないけど、墓地があったのは事実だ。

そして『せいりょう』とは、京都御所で一時期、帝が執務をした場所、『清涼殿(せいりょうでん)』と同じ音。

言霊(ことだま)に重きが置かれる陰陽師にとって、同じ音や文字があることは重要となる。

「地神がいたんだ……」

百葉箱のような社を思い出す。

「まあ、旧い血筋が多い学園と言っても、今はそれは取り立てるようなことじゃない。むしろ俺たちのように、本質的な意味で家業を継いでいる方が珍しい。陰陽師の系統は、学内には御門(うち)の三人と、黒と真紅しかいないしな」

白ちゃんの家、月御門別邸にいる三人も斎陵学園の生徒で、影小路から斎陵学園にいるのは、黒ちゃんと私だけだ。