昼から夜への移り変わりの時間。
晴れていれば、美しい曙のグラデーションが広がっていたであろう時間。
梅雨に入ったばかりで、ごまミルク色の雲が一面に広がっている。
そんな中で、私はどうして今日ここへ来ることを選んでしまったのだろう。

大学生活のほとんどをここで過ごした…と言っても過言ではない、渋谷の一角にあるマンションの一室。
もう都会生活6年目に入るにも関わらず、決して垢抜けない私とは違う、都会がとてもよく似合うスーツ姿の綺麗な女性が、彼と楽しそうに笑っていた。
オフィスの中には、2人以外は誰もいなかった。
他の社員は、きっとお昼に出かけているのだろうか。

せめて ドアがしまっていればよかったのに。

私はインターンとして。
彼は起業したばかりのベンチャー社長として。
そもそもお金を支払う立場と支払われる立場として、私たちはこの小さなオフィスで出会った。
決して馴れ合うべき関係ではなかったのだろう。
そんなことを考えながら、私はその場から立ち去った。