茫然としながらわたしは、学生時代のことを思い出した。社会の授業中、教師がこんな話をしていた。「今の世の中の仕組みは不完全で、未完成である」と。

 ずっと昔の先祖たちの過ちで、多くの命が失われ、大地は荒廃した。それをまた発展させたのは、進化を続ける人工知能たちだ。だから彼らが統治することは理解できるし、過ちを犯した人々の地位が低いのも頷ける。

 でも人工知能やロボットさえいれば世の中が発展するのなら、人類はどうして生かされ続けるのか。人間証明書と番号で管理され続けるのか。そもそも技術が進化したならば、証明書を常に携帯せずとも、情報を入力したチップを身体に埋め込めばいい。それができない、もしくはしない理由が、何かあるのか……。

 これらは全て教師の雑談で、生徒たちからの意見も、結論も求めなかった。
 でもわたしは、その通りだと思った。街中がロボットたちで溢れ、証明書で管理がされているのに、犯罪はなくなる様子がない。
 絶滅の危機に瀕している動物たちだって、荒廃した大地を蘇らせるほどの計算能力と技術があるのなら、絶滅しないよう計算はできないのだろうか。

 あのとき教師が言っていたことが、今更になってちゃんと理解できた。本当に今の世の中の仕組みは不完全で、未完成だ。だから未だに人工知能たちが思い描く世の中になっていないのだ。

 でも、だとしても……わたしたち人類はそれ以上に無力である。

 そんなことを考えながら、無力なわたしは装置の中で、眼球がずきずき痛むくらいの強い光に、まぶたをぎゅうっと閉じた。