夜が明けるたび気分が沈んでいき、そして、提示猶予期限を迎えた。
 人間証明書はおろか、バスの定期券が入ったパスケースすらも見つからなかった。

 数日前に挫いた足の痛みなど忘れてしまうくらい、茫然としながら警察署へ向かう。三日前と同じ不愛想な警官にその旨を伝えると、彼はやはり不愛想に、淡々と、これから先のことを教えてくれた。

 わたしはこのまますぐに収容所へ送られる。一人暮らしのアパートは国の預かりとなり、私物も私財も没収。仕事は本日をもって退職となるらしい。
 証明書一枚すら管理できない者は皆収容所で「世のためになる仕事」に従事するとのこと。

 この三日間で気力はほとんど失われ、説明を聞いても返事することもできなかった。そして震える手で同意書にサインをすると、警官たちに両腕を拘束されながら、収容所へ運ばれたのだった。