光が弱まっても眼球はまだ痛み、強い吐き気と全身の倦怠感に襲われ、わたしはその場に蹲り、しばらくそうしていた。

 どのくらいの時間が経ったのだろうか。やがて装置の分厚い扉が開き、流れ込んできた外気に鼻をすんすんと動かす。
 ゆっくりと目を開けた先にいたのは、先程の係員の人型ロボットだった。

 彼は無表情のままわたしの身体を軽々と抱え上げ、出入り口のすぐ横にある姿見の前に立つ。
 そこに映ったのは無表情の人型ロボットと、彼に抱えられる、黒猫だった。黒猫は驚いたように目を見開き、小さな口をぽかんと開けている。

 ふ、と。巨大装置の中で聞いた音声案内の言葉を思い出す。

――人間証明書の紛失者は動物の身体に作り換えられ、動物として多数の子孫を残す――……

 そうか。そうなのか。わたしは、黒猫になってしまったのだな。どういう原理で人の身体が猫へと作り換えられるのかは全く分からないけれど、こうなってしまったのだ。受け入れがたくとも、これが現実だ。

 そしてわたしは、人型ロボットに投げ捨てられて収容所を出た。