――誰かに。

呼ばれている。


「まだ眠いのかい、愛し子よ。大丈夫、世界は君にとても優しい。早く目覚めるとよいよ」


優しく耳朶を震わすその声は、誰のものなのか。

ゆっくりと瞼を開き、果たして、そこは黄金の光の中だった。
黄金の光の奔流の、その中央。そこに白い人影――否、厳密には影ではないのだろうが――があった。
声は恐らく、そこから聞こえてきているのだろう――そう考えて、私は現状がおかしい、とようやく気が付いた。

そうだ、私は。
私は死んだはずではなかったのか。


「そう、君は一度死んだ。しかしもう一度やり直せるのだよ。恐れないでよろしい。君が望むままに、世界は変わるのだからね。

新たなる聖女よ。聖なる涙の持ち主よ。君の願いはたった一度、しかし何であれ聞き届けられる。
さあ、君はこの世界の何を嘆き、この世界に何を望む?」


白い影が、笑う。
表情は見えなかったが、私に笑顔を見せたのが、はっきりとわかった。


「さあ、聖女よ」


私は。


私は――――。