「聞いて驚け! 実は私、前世で魔女だったんだ」
みんなは、なんだいつものことかって、少しふざけて返事をする。
「へえ、俺は勇者だったぜ」
「え!? えっと、わ、私は……聖女? ってやつかな」
「お前らはまだまだだな。オレ様は魔王をやってたんだぜ」
丸い丸いビー玉が輝いた。
輝いた?
本当に?
ビー玉を手の中に握りしめて、空を仰ぎ見た。
「馬鹿みたいに」
それは紛れもなく自分にかけた言葉だった。
こんな超能力意味なんてないのに、いかにも使えますって感じで自然に身についているんだから、神様なんて大嫌いだ。せめて取り扱い説明書ぐらい、一緒にくれてもいいと思う。
そう思ってたら、隣で立ち上がる音がした。
「さてと」
――取り戻しに行きましょうか。
「何を?」
――みんなの青春を。
その言葉を盛り上げるかのように、力強い旋律が流れてくる。
彼は石に刺さった剣を抜く勇者のように、凛々しかった。