私が受けた痛みや抱えた苦しみを思えば、それも当然なのかもしれないと思い直してしまう。
 雷華様もその罰には不満の様で「甘い仕置きではないか」と苦言を申していた。
「やはりそうであるか。嫁御殿はどう思われる?この仕置きで良しとなれるだろうか?」
 藤次郎様の言葉が急にこちらに向いたので、私は慌てて「はい!」と答える。
「そ、それで申し分ないかと!」
 私の慌てた答えに、目の前の殿方からは「本心か?」と恐る恐ると言う風に尋ねられ、上からは「遠慮しておらぬか?」と訝かしまれる。
 私はその怪訝な二つの声に、「本心にございますから」と宥めさせる様に声を張り上げた。その言葉で、二人は「ならば良いが」と大人しく引き下がってくれたので、どこか胸をなで下ろす。
「では、雷華よ。この場は任せてくれるか」
「無論、そのつもりであった」
 雷華様の快諾を聞くと、藤次郎様は早速命令を出し始めた。自分の家臣達だけに命じるのではなく、呆然と立ち竦んでいる小十郎様達の家臣も瞬く間にまとめ上げてしまい、この場に居る武士達が一人の若き将によって動き始める。
 その姿を見て、雷華様は「やはり見事な手腕だ」と呟いた。
「あの、雷華様。雷華様は藤次郎様とお知り合いだったのですか」
 私が顔を見上げながら尋ねると。雷華様は「ああ」と私の方に顔を降ろしながら、すんなりと答える。
「政宗は幾度かこの屋敷を訪れておったのだ。その際に、我の目に止まってな。この先、奴がこの奥州を平定し、民を守り、民の為の泰平を成せるだろうと感じたのだ。現在の倭国で、あれより優れた者はおらんであろうな。現明帝も、奴と比べると劣る。りんとは違った意味で、政宗も我に気に入られた稀有な存在なのだ」
 雷華様に、一目で力を認められるなんて。やはり藤次郎様には、人並み外れた優れた才と力がおありなのね。
 雷華様の感服に尽きた言葉で、藤次郎様の威厳や凄さを改めて思い知り、目の前で場を収めている殿方を感嘆しながら見つめた。
「りん。実を申すとだな、我は政宗と共謀していた。だが、政宗は非常に弟想いでな。確信を得られるまでは動けぬと申して、動かなんだ。それだから、こうも時間がかかってしまったが。我に矢を放ち、りんを牢に幽閉したと言う証拠も揃ったので、我はあの夜、政宗の元に急いだのだ。そしてこうなる様に仕組み、事を運ばせた。すまなかったな、りん」