「あー、今日の日直は……、暁と高橋か。後で職員室に来なさい」

朝のホームルームの時に担任にそう言われたので、微妙な沈黙を保ちながら二人で職員室に行く。
職員室へ行けば、今年のハロウィンパーティーの注意事項を書いたプリントを渡された。プリントは学校側からの注意事項と、生徒会からの進行表。これを配っておけという事らしい。

「へえ、塚原はハロウィンパーティーもやるの」

玲人が努めて明るく振舞おうとしているので、あかねも倣う。

「そ、そうなの。去年の生徒会執行部が先生方と掛け合ってくれて全校でやったら大盛り上がりで。生徒が楽しめるならって、先生方が今年も許可してくれたみたいね」

自由な気風はあかねがこの高校を気に入っている理由の一つだ。

「文化祭みたいに外部に公開しないから、本当に自分たちだけで楽しむって感じね。見せる必要がないから、準備も個人個人だから気楽よ」

あかねはプリントを見ながら玲人に説明した。

「6限目のホームルームを使ってパーティーをするの。飾り付けはクラスによってしたりしなかったりね。ゲームにトップで勝った人が生徒会提供の景品を貰えるの。その後、生徒会からの差し入れでお菓子の差し入れがあって、それを食べながら閉会。でも、そのパーティー中にカップル決める子たちも、居るわね」

そういうカップルはハロウィンパーティーの後、一緒に帰る。そうプリントを見ながら説明して、ふと視線を感じたので顔を上げると、なんだか頬を赤くした玲人が見つめて来ていてちょっときょどる。

「な、なに?」
「い、いや、さっきはホントにごめん……」

あああああ、また恥ずかしさがぶり返してしまう!!! 振り返られなければ平気な顔も出来るのに、こういう事案はそっとしておいて欲しい!!!

「で、でも、僕のカーディガンをあかねちゃんが着てくれてるのを見るのは、ちょっと嬉しいかな……」

カーディガン……。

カーディガンは勿論男子用と女子用でサイズが違うので、玲人のカーディガンを借りているあかねは、今、ジャージの袖口から大きめのカーディガンが覗いている。プリントを持っていたあかねの手元を見た玲人が、それに気づいたのだった。

かああああ、と顔から火を噴く思いだ。なんというか、玲人に体を包まれているような……????

自分の発想にぶわああああ、と顔といわず全身の汗腺から汗が発汗する勢いだ。

(いやちょっと待った、私!!! 別にエロいことは考えてない!!! 事実!! カーディガンを借りてるのは事実だから!!!)

「いや!? そこに物の貸し借り以外の感情は何もないよね!?!? 天下の暁玲人ともあろう人が、そんなよこしまな事考えないよね!?!?」

必至で取り繕うあかねに、玲人は顔を赤くした。

ちょっと待ってえええええええ!!! 推しが!!! エロいこと考えてる!!! ジーザス!! オーマイゴット!!

「あかねちゃん。あの、ええと、すごいきれいだったから……!!」

ギャーーーーーーーー!!! もはや何を言われても辛い!! 推しの脳内に自分の醜い姿が記録されたのかと思うと、そこだけ脳内メモリを消去したい!! 人体専用脳内メモリ消去アプリの開発はまだ!?!?

などとあかねがとち狂ったことを考えても、まあ仕方のないことだった。