玲人というトップスターを掲げたクラスのまとまりは、それはそれは素晴らしかった。すぐさま執事服の発注とコスチュームをアレンジするための布・アクセサリー類の取り寄せから、各執事に合わせたデザイン化と縫製、それから教室内を仕切る材木と室内を飾り付ける布や雑貨類の手配に立て看板やメニュー表の作成などに取り掛かり、当日の係がある人を除いた全員が突貫工事を夜遅くまで学校に残ったり、時には家に持ち帰って作成したりしていた。

かくいうあかねや優菜も、当日クラスを盛り上げてくれる光輝や玲人たちの為に一生懸命作業した。多分一年で今が一番、お祭り気分だ。兎に角みんながテンション高く元気に自分たちに与えられた仕事をこなしていった。

「あかね……。お願いだからもうそのグローブに血の染みは付けないでね……」

あかねが家でビーズを縫い付けて持ってきた真っ白のドレスグローブを見て、ある朝優菜が不安そうな顔をした。あかねの両手の指は絆創膏だらけだ。

「だっ、大丈夫だよ! 刺したらすぐに絆創膏つけたし!」
「頼むわよ……。もう既に三対、あかねの出血で駄目にしてるんだからね? もう残り(スペア)がないのよ?」
「ごめん! でも見て!? 今度こそ綺麗に出来たと思うの!」

晴れ晴れとした笑みを見せるあかねが鞄から取り出したグローブには、綺麗にグレーのビーズの花が咲いていた。これまで三対、真っ白なグローブに血の染みを付けてしょんぼりしていたあかねとは打って変わった満面の笑みに、優菜もついつられて良かったね、と頭を撫でる。

「へへへ、心配かけてごめんね? しかし、優菜は何でもそつなくこなすもんなあ。それでいてそれが嫌味にならないのが素敵だよ」
「な、何言ってんの。別に私をおだてたって、何にも出てこないんだからね?」

突如ほめたたえられて、優菜が狼狽える。普段ツッコミに回るくせに、こういうところが意外とかわいい、とあかねは密かに思っていたりする。あかねはちょっと耳の先の赤い優菜と一緒に教室に入った。

「見て~! やっと私の分担したグローブが完成―!」
「おー、高橋さん、お疲れ~! 見せて見せて。おっ、綺麗に出来てるじゃん! やっぱり最後まで高橋さんに任せて良かったわ」

クラスメイトにもやっと完成したグローブを褒められて、やり遂げた気持ちになる。
おおよその衣装は出来上がりつつあるし、教室内の立て込み部分は既に平面的に組み立ててあり、あとは設置するばかりに出来上がっていて、座席の後ろに保管してある。残りは祭り前日に一気に組み立てて飾り付けるだけだ。あかねは出来上がったグローブを衣装箱に入れて回収してもらった。

いよいよ、明日である。