仕方なく帰宅すると、自分の部屋に向かい、すぐにスマホを開く。
【何でもいいから、連絡待ってる】
ぽんとメッセージを送ると、驚くことにすぐに既読のマークがついた。
「よかった。無事に目覚めたんだ……」
ほっとしながら彼女の返事を待っていると、またすぐにスマホが通知で震えた。
【死の世界が怖くならないように、今度たくさん話をして】
「粋……」
粋の切なる願いに、胸が痛くなる。
それと同時に、そんな話を彼女にできるのは、世界で俺だけだと思えた。
【何でも話すよ。何時間でも】
そう返して、俺はすぐさま机に向かった。
ペンとノートを取り出して、思いつくままにあることを書き綴っていく。
俺が彼女に残せるものは、きっとこれくらいだから。
父親が、何度か夕飯の知らせをしてくれていたことに気づかないほど集中したまま、俺はペンを走らせた。
〇
【やり残したこと、もう一個見つけた】
粋が無事に登校できるようになって一週間ほどたった、月曜日の朝。
学校で会える。それだけで幸せを感じていたときに、突然そんなメッセージがスマホに届いた。
俺は寝ぐせもそのままに、制服に腕を通してから、【何?】と返信する。
【今日から二週間、八雲と一緒に帰りたい】
どんなことかとどぎまぎしながら待っていたのに、あまりに平凡な〝やり残したこと〟に拍子抜けする。たしかに今まで粋は須藤と一緒に帰っていたから、約束をしない限り放課後二人になることは少なかった。
俺は【そんなことでいいの?】と返すと、すぐに【うん!】という返事がきた。
【一緒に帰って、色んなところ寄り道したい。八雲と、高校生らしいことをしたい】
「高校生らしいこと……」
それって、具体的にどんなことだっけ。
自分の中の価値観に全く自信がなくて、うーんと頭を悩ませる。
だけど、彼女はやりたいと言っているのだから、俺は難しく考えすぎずに何でも付き合おうと思った。
いつものように登校し、いつも通り授業を終えて、あっという間に放課後になった。
粋は完全に橋田たちとは決裂したようで、日中は須藤と一緒に行動している。
今まで知らなかったけれど、須藤が週に数回活動している茶道部に入っているため、粋はひとりで帰ることも多かったようだ。
それを聞いたときは、そんな部活がそもそもうちの高校にあったのかと驚いた。
【何でもいいから、連絡待ってる】
ぽんとメッセージを送ると、驚くことにすぐに既読のマークがついた。
「よかった。無事に目覚めたんだ……」
ほっとしながら彼女の返事を待っていると、またすぐにスマホが通知で震えた。
【死の世界が怖くならないように、今度たくさん話をして】
「粋……」
粋の切なる願いに、胸が痛くなる。
それと同時に、そんな話を彼女にできるのは、世界で俺だけだと思えた。
【何でも話すよ。何時間でも】
そう返して、俺はすぐさま机に向かった。
ペンとノートを取り出して、思いつくままにあることを書き綴っていく。
俺が彼女に残せるものは、きっとこれくらいだから。
父親が、何度か夕飯の知らせをしてくれていたことに気づかないほど集中したまま、俺はペンを走らせた。
〇
【やり残したこと、もう一個見つけた】
粋が無事に登校できるようになって一週間ほどたった、月曜日の朝。
学校で会える。それだけで幸せを感じていたときに、突然そんなメッセージがスマホに届いた。
俺は寝ぐせもそのままに、制服に腕を通してから、【何?】と返信する。
【今日から二週間、八雲と一緒に帰りたい】
どんなことかとどぎまぎしながら待っていたのに、あまりに平凡な〝やり残したこと〟に拍子抜けする。たしかに今まで粋は須藤と一緒に帰っていたから、約束をしない限り放課後二人になることは少なかった。
俺は【そんなことでいいの?】と返すと、すぐに【うん!】という返事がきた。
【一緒に帰って、色んなところ寄り道したい。八雲と、高校生らしいことをしたい】
「高校生らしいこと……」
それって、具体的にどんなことだっけ。
自分の中の価値観に全く自信がなくて、うーんと頭を悩ませる。
だけど、彼女はやりたいと言っているのだから、俺は難しく考えすぎずに何でも付き合おうと思った。
いつものように登校し、いつも通り授業を終えて、あっという間に放課後になった。
粋は完全に橋田たちとは決裂したようで、日中は須藤と一緒に行動している。
今まで知らなかったけれど、須藤が週に数回活動している茶道部に入っているため、粋はひとりで帰ることも多かったようだ。
それを聞いたときは、そんな部活がそもそもうちの高校にあったのかと驚いた。