女になったり動物になったり男になったり。人格もある程度保たれたまま、ある日突然覚醒して、見た目だけが違う人間に生まれ変わっていることに気づくのだ。
 動物のときは短命なので、かれこれ合わせて十回目の人生を歩んでいる。年数にするとどれほどなのか、かなり途方もないので数えることは途中で止めた。
 今の高校では、わりといい位置にするっと入り込めたと思っている。
 女子からは遠巻きにされ、たまにひょうきんな男子に話しかけられ、その時だけ仲良くする。どこにも所属せず、かといってハブられているわけでもない。
 なんて居心地がいいのだろう。これも人生を何周もしてきたからこその処世術ってやつだろうか。
「おい、八雲―! ちょっとこっち来いよ」
 クラスのムードメーカー的存在で、短髪で年中日焼けしている秦野(はたの)に呼ばれ、俺は読んでいた小説を置いて席を立つ。ちなみに秦野の前世はそこそこ有名な野球選手で、何かの運命なのか彼は今も野球部のエースだ。
 男子が四人ほど集まっている席に向かうと、秦野がこそっと耳打ちをしてきた。
「なあ、修学旅行のチーム分け、女子誰誘う? 今日チーム分けすんだろ」
「ああ、別に誰でもいいけど」
「ガチ? 今男子でスタメン組んでたんだけど」
 修学旅行に行くのは、人生で何度目だっけな。
 もう嫌と言うほど同じ説明を聞いたので、京都の寺には一切興味ないし、チーム分けも本気でどうでもいい。
 どうやら一緒のチームになりたい可愛い子、でスタメンを組んでいるらしいが、男子高校生とはなんでこんなにバカで暇なんだろうか。
「皆誰と行きたがってんの?」
 俺の質問に、秦野は嬉々として答えた。
「そりゃ白石だろ! 落ち着いてて可愛いし。白石呼べれば、他の可愛い子もついてくるだろうし」
「へぇ、そうなんだ」
 白石はモテているのか。ここに転校して半年が経ったけれど、今初めて知った。
 色んな時代を生きすぎたせいで、何が可愛いとか綺麗とかかっこいいとか、そういう基準が自分の中で全部曖昧になっている。
 白石がいる斜め前方の席に、ちらっと視線を移してみる。
 少し茶色がかったセミロングに、雪のように白い肌。背も高くてたしかにスタイルがいい。
 容姿については今言われてから気づいたけれど、白石の印象は、一言で言うと、“いつもつまらなさそうにしている人”だ。