どうやって会話を繋げようか頭を必死に回転させていると、突然「白石さん」と背後から名前を呼ばれた。
後ろを振り向くと、そこには艶やかな黒髪の毛先を内巻きにした、立川さんがいた。
「体調はもう大丈夫なの? よかったね」
「あ、うん……」
「白石さんの課題預かってるものあるから、ちょっとこっち来て」
彼女に言われるがままに、私はその場をひとまず去り、教室の後ろにあるロッカーへと向かった。天音が、心配そうにこっちを見ていたけれど、私は大丈夫という意味も込めて笑顔を返した。
課題を預かってくれていたのは本当なようで、「はい」と数枚のプリントを渡された私は、ぺこっと頭を下げた。
課題を眺めていると、頭上から突然「わざとでしょ」という言葉が振ってきて、驚き顔を上げる。
「倒れたの、演技でしょ。告白、わざと邪魔したんでしょ」
「え……?」
立川さんが、周りに修羅場だと悟られないように、表情は穏やかな笑みのまま、怒りをぶつけてきた。
驚きで一瞬思考が停止したけれど、立川さんはじっと私のことを見つめたまま、私の返答を待っている。
もちろん、演技ではない。でも、邪魔してしまったことは確かだ。
やはり立川さんはあの日、告白していたのか。
「最近評判悪いよ、白石さん」
えりな達から何か吹きこまれたのだろう。
私を追い立てるように言葉を続ける彼女に、どう返答したらよいのか迷う。
「ちょっと、粋に何言ってるの?」
俯き押し黙っていると、いつの間にか天音が割って入ってきた。
面倒だと思ったのか、立川さんは「別に?」と言って言葉を濁す。
どうしよう。ここで喧嘩になって、天音がいじめられでもしたら大変だ。
私は天音にこれ以上迷惑をかけてはいけないと思って、すぐに口を開いた。
「私と八雲は付き合うとか絶対ないから」
断言する私に、二人は「え」と口を丸く開けて驚いている。
自分で言っておきながら、ズキッと胸が痛む。
けれど、これは揺るがない事実だ。万が一両想いになれたとしても、私の人生はもう短い。
「だから、安心して」
最後にそう言って、私はすっと廊下へ向かった。
これ以上自分の言葉で自分を傷つけることが限界だった。
天音は「粋!」と焦ったように私の名前を呼んで追いかけてきてくれたけれど、今はとにかく逃げたかった。
後ろを振り向くと、そこには艶やかな黒髪の毛先を内巻きにした、立川さんがいた。
「体調はもう大丈夫なの? よかったね」
「あ、うん……」
「白石さんの課題預かってるものあるから、ちょっとこっち来て」
彼女に言われるがままに、私はその場をひとまず去り、教室の後ろにあるロッカーへと向かった。天音が、心配そうにこっちを見ていたけれど、私は大丈夫という意味も込めて笑顔を返した。
課題を預かってくれていたのは本当なようで、「はい」と数枚のプリントを渡された私は、ぺこっと頭を下げた。
課題を眺めていると、頭上から突然「わざとでしょ」という言葉が振ってきて、驚き顔を上げる。
「倒れたの、演技でしょ。告白、わざと邪魔したんでしょ」
「え……?」
立川さんが、周りに修羅場だと悟られないように、表情は穏やかな笑みのまま、怒りをぶつけてきた。
驚きで一瞬思考が停止したけれど、立川さんはじっと私のことを見つめたまま、私の返答を待っている。
もちろん、演技ではない。でも、邪魔してしまったことは確かだ。
やはり立川さんはあの日、告白していたのか。
「最近評判悪いよ、白石さん」
えりな達から何か吹きこまれたのだろう。
私を追い立てるように言葉を続ける彼女に、どう返答したらよいのか迷う。
「ちょっと、粋に何言ってるの?」
俯き押し黙っていると、いつの間にか天音が割って入ってきた。
面倒だと思ったのか、立川さんは「別に?」と言って言葉を濁す。
どうしよう。ここで喧嘩になって、天音がいじめられでもしたら大変だ。
私は天音にこれ以上迷惑をかけてはいけないと思って、すぐに口を開いた。
「私と八雲は付き合うとか絶対ないから」
断言する私に、二人は「え」と口を丸く開けて驚いている。
自分で言っておきながら、ズキッと胸が痛む。
けれど、これは揺るがない事実だ。万が一両想いになれたとしても、私の人生はもう短い。
「だから、安心して」
最後にそう言って、私はすっと廊下へ向かった。
これ以上自分の言葉で自分を傷つけることが限界だった。
天音は「粋!」と焦ったように私の名前を呼んで追いかけてきてくれたけれど、今はとにかく逃げたかった。