「言いづらいけど、一応共有しておくね。祥子とえりな、粋に謎にキレられた……って、SNSにあげてたの」
「……ああ、それでこの空気なんだ」
 なるほど。わたしは早々にブロックされていたので気づかなかったけれど、その話を聞いて今の空気感に納得した。
「ごめん。止められなくて」
「なんで。天音は何も悪くない。むしろ、巻き込んでごめんね」
 苦笑交じりで謝ると、彼女はものすごく辛そうな顔をして、「私こそだよ」と言った。
 私のせいで、天音とえりな達との関係を悪くしてしまったことを、申し訳なく思う。
 けれど、彼女はそれを必死に否定して、首を横に振ってくれている。
「正直、代わりに言ってくれてスカッとした。ありがとう」
「え……?」
 思わぬ言葉に、私は思わず聞き返してしまう。
 天音は今まで見たことないくらい真剣な顔をしていて、すぅっとひとつ深呼吸をしてから、口を開いた。
「恋バナ全然興味なくて、テキトーに聞きすぎてた私も悪いね。でも、〝天音は純粋キャラだから……〟って、いつも勝手にキャラ付けされて線引きされるのが、正直しんどかったの」
「そう……、だったの」
「ずっと居心地悪かった。でも、粋といたかったから、我慢してた。でももう、我慢しなくていいんだね」
 そう言い切って、ニコッと笑う天音。
 いつもほわんとしている天音が、まさかそこまで思っていただなんて知らなくて、驚きを隠せない。
 でも、私といたいと言ってもらえることは、単純に嬉しかった。
「私ね、本当に一切恋愛感情ってやつがないの。多分きっと、私には一生分からない」
「え……」
「私みたいな人って、結構いるんだって」
 戸惑っている私に、天音はようやくすべてを見せてくれるかのように、ぽつりぽつりと語ってくれた。
「だからね、粋が、〝恋愛経験がなきゃ、人より劣ってる?〟って怒ってくれたこと、凄く嬉しかったんだ」
「え……」
「中高生になってからずっと、恋愛してる人がすごいみたいな世界だったからさ」
 天音の知らない部分を知って、私はなぜか胸が熱くなっていた。
 私だけに打ち明けてくれているような、そんな気がしたから。
 今、目の前にいる天音が、どんな気持でいるのか百%分かることなんて出来ない。
 でももう私は、絶対に選択を誤ったりしたくない。
 私にとって天音は……大切な友達だから。