それは、私が彼女にもしもう一度会えるのなら、一番伝えたかったことだった。
 これは私の、都合のいい夢だから。
 夢花の反応も、私にとって都合のいい反応になっているだけだから。
 分かっている。でも、どうしても伝えたかったんだ。
 私は、しばらく固まっている夢花の顔を見つめたまま、彼女の言葉を待った。
「粋、やっぱり変な子だ」
「変かな……」
「うん、変。私と同じくらい」
 そう言って、彼女は笑った。
 目じりには、涙が一粒溜まっているようにも見えた。
 そうか、もういっそ、変だということを受け止めて生きていった方が、楽しかったりするのかな。
 本当にこの言葉を現実であの日の夢花に言えていたなら、未来は変わったのかな。
 ねぇ、夢花。今は生まれ変わって、どんな人生を送っているの?
 どこにいて、どんな人に囲まれて、どういう風に生きていこうと思っているの。
 もう二度と夢花として会うことは叶わないけれど、どうか、自分のことを大切にして生きていてほしい。
 夢花。もうすぐ、私も生まれ変わるよ。
 新しい私たちになったら、また仲良くできるかな。そうだったら、嬉しい。



 冬休みが明け、教室に入ると、いつもと空気が違うことにすぐに気が付いた。
 ちらちらと視線を感じながら自分の席に着くと、天音がすぐに駆け寄ってきた。
「粋、おはよう……!」
「天音。メッセージもらってたのにちゃんと返せなくてごめんね」
 色んなことがあったとはいえ、ろくに返信をせずに心配させてしまったことを申し訳なく思う。
 真剣に謝ると、天音は「全然だよ」と言って首を横に振った。
 祥子とえりなが丁度一緒に登校してきたのが見えて、私はじっと彼女たちに視線を送った。
 謝る気も、弁解する気もない。だってあれは全部、本心だから。
 でも、私の本音を聞いて彼女たちがどう思ったのか、ちゃんと向き合いたいとも思っている。
 そんな私の願いは虚しく、二人が私たちの横を通り過ぎる瞬間、ぼそっと小さい声で「朝から気分悪」という一言が聞こえてきた。
 ……そりゃ、そうだ。
 私は、自分の勝手な価値観で、あの二人に暴言を吐いたのだから。
 どっちが正しい正しくないの話ではない。
 自分が気に食わないと思っていることを、私はただぶつけただけ。
 ふと天音の方を見ると、彼女は何とも言えない表情をしていた。