毎日夢花とのことを後悔しながら、いつか謝りたいと、そう思いながら日々はあっという間に過ぎた、十四歳の夏のこと。
 訃報は突然、訪れた。
「粋。落ち着いて聞いてね……。夢花ちゃん、十日前に亡くなったらしいの」
「え……?」
「交通事故だって」
 突然のことだった。夢花は交通事故で亡くなった。
 リビングで夕飯を食べ終えたあと、母親が神妙な面持ちでいきなりそう告げてきたのだ。
「嘘だ……」
「悲しいけど……本当なの」
「嘘だ……!」
 母親の言っていることが信じられなくて、私はすぐにニュース記事を調べた。
 けれどそこで、私はもっと残酷な事実を知ることになる。
 事故という扱いになっているけれど、実際は〝自殺〟だったという目撃証言もあると、そこには書かれていた。
「自……殺……?」
「粋、その情報はまだたしかなものじゃないから……」
「でも、見た人が何人もいるって……」
 空っぽな心で、茫然自失としたままつぶやく。
 彼女と過ごした日々が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
 自殺という二文字が目に焼き付き、脳内で何かがはじけ飛んで……、私はリビングでなりふり構わず慟哭した。
「うああああああああああっ……」
「粋! 落ち着いてっ……!」
 母親が覆いかぶさるように背中から私を抱き知るけれど、私はそれを振り払う。
 もう二度と会えない。
 その事実が、波のように自分を追い込んで、心臓を破壊していく。
 大晦日のあの夜。夢花はきっと、想像できないほどの勇気を出して、私に打ち明けてくれたんだろう。
『私は……粋が、好き』
 彼女の言葉を聞いたあと、私……何て言った?
 溢れ出る涙を拭いもせずに、私は過去をさかのぼる。
 ――そうだ。あのとき、私は、たった一言で夢花を壊したんだ。
「何で?って……言ったの……私……」
「え……?」
 涙で震えた声を、母親は必死に聞き取ろうとしている。
 私はもう一度、自分を戒めるように唇に力を込めた。
「夢花の真剣な気持ちに対して、何で?って……言ったんだよ……私……っ」
「粋……」
「あ、あのとき夢花は、な、泣きそうな顔して……たのに……うっ、ううぅ……」
 あの瞬間、私は、夢花の心を、殺したんだ。
 自分の無意識の残酷さに、吐き気がする。私は床に額をつけて、泣き声を押し殺した。
 屋台のにおいや眩い光ごと、鮮明に蘇ってくる。