「え? そうなの?」
 俺の言葉に、秦野は意外そうに目を見開いて驚いている。
 意外と須藤は度胸がすわっているところがあるけど、白石はいつも何か言いたそうにしているような印象だ。
 時折教室で彼女たち四人を見ると、白石だけ無理して笑っているように感じることがあった。
 まあ、女子には女子特有の交友関係があるのは分かる。過去に経験したことがあるから。
 そういえば、漫画のようないじめにあったこともあった。
 男子も男子で陰湿な奴はいるけど、女子の空気の読み合いは相当ストレスが強かった記憶だ。
「赤沢君、次お昼、お店調べておいたんだけど」
 本堂を見終えると、何もなかったように白石が話しかけてきた。
 その取り繕った笑顔を見たら、なぜか彼女の本心がもっと知りたくなってしまった。
「白石、橋田たちとつるむの、しんどくないの?」
 そう問いかけると、彼女はピタッと表情を固まらせてから、「え……?」と動揺の声を漏らす。
「前も言ったけど、いつもつまんなさそうにしてるよね」
「そ、そんなことな……」
「まあ、別にいいけど。残り少ない貴重な人生を、そんなとこで消費していいのかなって思っただけ」
 白石はわずかな怒りの感情を瞳に潜ませて、無責任に言い捨てる俺のことをじっと見ている。
 あと少しで、白石の本心に触れられそう。
 そんな気がして、俺はわざといじわるなことを言って、ただ彼女の言葉を待った。
「八雲ー! 白石さん! そろそろバス来るぜー」
 秦野に声をかけられ、弾かれたように視線を前方に向ける白石。
 俺も前を向きなおして、走ってバス停に向かい白石の後をついていった。
 
 少しずつ太陽が傾いてきた午後。
 おばんざいを食べ終え、三十三間堂も見学した俺たちは、いよいよメインである伏見稲荷大社に辿り着いた。
「わー、狐さんだー! か、可愛い……」
 境内の至る所に、伏見稲荷大社のお使いである〝狐〟の像があった。
 なぜか狐にハマっているらしい須藤が、ここでもあちこち動き回り、似たような像を写真におさめまくっている。
「天音がじっくり見たいなら、自由行動にする?」 
「えっ、そんな、いいの……?」
「うん、男子たちもそれでいい?」
 白石の提案に、秦野も「OK!」と元気に頷く。
「あ! 野球部の奴らもいるー! ごめん俺ちょっと挨拶してくるわ」