元々あった肉体に魂が乗り移っているのか、それとも本当に最初の段階から生まれ変わっているのかは分からない。
 そして全てを思いだした頃、俺は毎回絶望するのだ。
 ああ、また終わりのない人生が始まった――と。
 俺は普通の人間ではなくて、すでに何度も人生を終えている人間なのだと。
 自分がどんな人間なのかを思いだした途端、肉体的な意味では同級生の子供と、どう接したらいいのか分からなくなってくる。
 すでに習った義務教育をまた一からやり直し、知っていることを知らないふりをして生きていく。
 一度、知らないふりをすることを諦めて、言われるがままに勉強していたら、天才だと囃し立てられ面倒なことになったこともある。
 とはいっても、何度も何度も経験していることにいちいち感動したりできる訳もなく、俺の平坦な性格は男でも女でも一貫して変わっていない。
 未練を残すために何度か恋人を作ったこともあったけど、結局達観した性格に不満を持たれて、どの相手とも上手くいかなかった。
『あなたはさ、本当に人に興味がないよね』
 そう言われたのは、いつの時代の恋人だっただろうか。
 相手は静かに泣きながら訴えていて、俺のことを変えようとしてくれているのも伝わっていたけど、結局俺はどうにもできなかった。
 そんなことを言われても、心が動かなかった。
 そして……、赤沢八雲として生まれてきたとき、俺は今までのどの人生よりも絶望していた。
 一度住んだことのある地、とくに特徴のない肉体、何も起こりそうにない平和な環境。
 ああ、この人生でも、どうせ未練なんて見つからない。
 また負のループから抜け出せずに、ただ命が尽きるのを待つことになるんだ。
 全てをどうでもよく思いながら電車に乗り、寝過ごしてしまったあの日。
 まさか、一般人にこの能力を打ち明ける日が来るだなんて、思いもしなかった。
『ねぇ、前世の記憶が見えるのなら、生まれ変わりを探して欲しい人がいるんだけど』
 そして、あんなお願いをされるだなんて。
 生まれ変わっても会いたい人がいる。
 そんな真っ直ぐな気持ちをぶつけてくる白石が、純粋に眩しかった。
 しまなみ海道のサイクリング、ボムの実のビッグパフェ、夜の長電話……。
 彼女が提案してくる〝やり残していたこと〟は予測不能で、その背景には夢花さんという少女が関係していることがよく分かる。