「わ、私も賛成です……。ていうか、皆ありがと……!」
 普段絡みのないメンバーだけど、思ったよりもスムーズに話が進んでいく。
 にも関わらず、ずっと赤沢君が眠たそうにどうでもよさそうにしているので、秦野君が肘で突いた。
「おい八雲、お前ちゃんと聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。皆が行きたいところどうぞ」
「なんでそんなにやる気ないんだよー。京都行ったことあんの?」
「うん、何回も」
 その瞬間、あ、という顔をした赤沢君を、私は見逃さなかった。
 苦笑しながら赤沢君のことを見ていると、彼は「祖母の家が京都にあるんだ」と無理やり続けた。
 秦野君はすぐに納得してくれたけれど、まさか人生を何周もしているから、だとは思わないだろう。
「まあ、だから、交通系は頭に入ってるから任せてくれていいよ」
 やる気がなさそうにしていることに少し罪悪感を抱いたのか、赤沢君がそう付け足した。
 地理が苦手らしい秦野君と天音は目を輝かせ、尊敬のまなざしで赤沢君を見つめている。
「じゃあもう、俺ら話し合い終わりってこと?」
「うん、終わった人から帰っていいって言ってたよね?」
「じゃあさ、このメンバーでこのままどっか遊び行かねぇ?」
 秦野君の言葉に相槌を打つと、彼は目を輝かせたまま新たな提案をしてきた。
 予想外のお誘いに、私も天音もお互いに顔を見合わせて反応に困っている。
「ほら、修学旅行の決起会?的なさ」
 とくにこの後予定は入っていないけれど……。
 天音は、男子と遊んだりするのに抵抗がありそうだけど、大丈夫だろうか。
「どうする?」と耳打ちすると、天音は「粋がいるならいいよ」と意外にもケロッとしていた。
 ちらっと赤沢君を見ると、彼はまたどうでもよさそうな顔をしている。
 数秒考えた後、私はあることを閃いた。
「じゃあさ、『ボムの実』の大きなパフェ食べに行かない? 一度は食べてみたいと思っててさ」
「えっ、あのデカ盛りのやつ?」
「う、うん……」
 秦野君は目を見開き驚いていたけれど、天音は案外乗り気で「それ楽しそう」と言ってくれた。
「男子が二人いたら食べきれそうかなーなんて……」
「任せてよ! なあ、俺らがいれば余裕だよな? 八雲」
 秦野君が思い切り赤沢君の肩を叩くと、彼は心底嫌そうな顔をしている。