病人がダイエットしてどうすんだ、と言ってから気づいたけれど、母親はやっぱり何も言ってこなかった。
母親……紀香さんは、私にぶつけたい本音を、いつも飲み込んでいる気がする。
もし本当の親子だったなら、『ジャムのクッキーは嫌いだ』と、言えたのだろうか。
そんなことを考えながら、私は階段を昇ろうとした。
……けれど、ピタッと足を止めて、階段に足をかけた状態で、キッチンにいる母親に声をかける。
「そういえば、今週の土曜日、広島行ってきていい?」
「え……、えぇ? ちょ、ちょっとそれは誠司さんに聞いてみないと……。いきなりどうしたの?」
「うーん、でも決まったことだから。行ってくるね」
「待って、粋ちゃん!」
私は母親の言葉を全て聞かずに、今度こそ二階へと駆け上がる。
薄いピンク色の壁紙が全く気に入っていない自室に入ると、ベッドに思い切りダイブした。
そして、寝転がりながらスマホを開き、広島への行き方を検索する。
「電車代、結構するなあ……」
お年玉を崩して行くしかない。
しまなみ海道の景色を頭の中に浮かべながら、私はゆっくりと目を閉じた。
『ねぇ、前世の記憶が見えるのなら、生まれ変わりを探して欲しい人がいるんだけど』
ふと、赤沢君に必死でお願いしたときの記憶が蘇ってくる。
あの時赤沢君は、すごく驚いた顔をしていた。
彼の能力が本当かどうかはもう、この際どうでもよかった。
私にとっての最大の未練は、夢花そのものだから。
たとえどんな姿形になっていたとしても、人じゃなくても、もう一度夢花に会えるのなら、それ以上の願いはない。
「夢花、ごめんね……」
余命宣告を受けたときも涙は出なかったのに、彼女の名前を呼んだだけで、つぅっと静かに涙が頬を伝っていった。
……死ぬまでに、かつての親友との記憶を辿っていく。
どうしてか、そんなことに赤沢君を巻き込むことになってしまった。
いくら人生を何周もしている彼でも、こんな経験は初めてなんじゃないだろうか。
赤沢君が本当にこの未練に付き合ってくれるかどうかは分からないけれど、彼が本当に来てくれることを、私はどこか本気で願っていた。
母親……紀香さんは、私にぶつけたい本音を、いつも飲み込んでいる気がする。
もし本当の親子だったなら、『ジャムのクッキーは嫌いだ』と、言えたのだろうか。
そんなことを考えながら、私は階段を昇ろうとした。
……けれど、ピタッと足を止めて、階段に足をかけた状態で、キッチンにいる母親に声をかける。
「そういえば、今週の土曜日、広島行ってきていい?」
「え……、えぇ? ちょ、ちょっとそれは誠司さんに聞いてみないと……。いきなりどうしたの?」
「うーん、でも決まったことだから。行ってくるね」
「待って、粋ちゃん!」
私は母親の言葉を全て聞かずに、今度こそ二階へと駆け上がる。
薄いピンク色の壁紙が全く気に入っていない自室に入ると、ベッドに思い切りダイブした。
そして、寝転がりながらスマホを開き、広島への行き方を検索する。
「電車代、結構するなあ……」
お年玉を崩して行くしかない。
しまなみ海道の景色を頭の中に浮かべながら、私はゆっくりと目を閉じた。
『ねぇ、前世の記憶が見えるのなら、生まれ変わりを探して欲しい人がいるんだけど』
ふと、赤沢君に必死でお願いしたときの記憶が蘇ってくる。
あの時赤沢君は、すごく驚いた顔をしていた。
彼の能力が本当かどうかはもう、この際どうでもよかった。
私にとっての最大の未練は、夢花そのものだから。
たとえどんな姿形になっていたとしても、人じゃなくても、もう一度夢花に会えるのなら、それ以上の願いはない。
「夢花、ごめんね……」
余命宣告を受けたときも涙は出なかったのに、彼女の名前を呼んだだけで、つぅっと静かに涙が頬を伝っていった。
……死ぬまでに、かつての親友との記憶を辿っていく。
どうしてか、そんなことに赤沢君を巻き込むことになってしまった。
いくら人生を何周もしている彼でも、こんな経験は初めてなんじゃないだろうか。
赤沢君が本当にこの未練に付き合ってくれるかどうかは分からないけれど、彼が本当に来てくれることを、私はどこか本気で願っていた。