「修学旅行にやる気ない方が、こっちの希望聞いてくれそうじゃん」
「たしかに、粋頭いい」
祥子はびしっと私に親指を立てて、まだ笑っている。
再び斜め前方にいる天音に目を向けると、彼女は所在なさげにお弁当のおかずをつまんでいた。
じつはこの学校で一番の美少女は、天音だと思っている。
眼鏡で気づかれにくいのかもしれないけど、目の形がとても綺麗で、ショートカットの黒髪はいつ見ても艶やかだ。
育ちの良さが所作から滲み出ていて、人の悪口は絶対に言わないし、汚い下ネタには苦笑するだけ。
そういうところがえりなと祥子にとってはつまらないのかもしれないけれど、私は天音の自分を持っているところが密かに好きだ。
それに、その落ち着いた雰囲気が〝夢花〟に似ているから……、なんだか放っておけない気持ちになる。
席が近かったという理由で、最初は天音と二人で仲良くなり、そのうちえりなと祥子が加わってきて、今の四人組になった。
天音は、ちぐはぐな私達と過ごす時間を、心中ではどんな風に思っているんだろう。
「修学旅行の男女の組み合わせはくじ引きで行う」
普段は親しみやすいけど、怒ると誰もが黙り込むほど怖い伊藤(いとう)先生が、有無を言わさぬ雰囲気で仕切り始めた。
秦野君がすかさず抗議をしていたけれど、秒で却下されている。
かなりどうでもいいと思っていた私は、箱の中に入っているくじを全くかき混ぜずに、上からスッと取った。
紙に書かれていたアルファベットは、〝A〟。
男子もぼちぼち引き終えたところで、「Aの人誰―?」と呼びかけたところ、すぐにひとりが挙手した。
「あ」
思わず声が出てしまい、片手で口を押さえる。
挙手しているのは、昼休みに自分が伝えていた希望通りの人だった。
修学旅行に対してモチベーションゼロな人。そんなの、人生何周もしてる赤沢君くらいしかいない。
あまりに理想的過ぎて、思わず笑いそうになってしまう。
「白石さん、俺も!!」
笑いをこらえていると、急にスポーツ刈りの秦野君がカットインしてきた。
ニヤついていることがバレないように、咄嗟に「あ、よろしく」と淡白に返す。
「おいお前ら、騒いでないで黒板に組み合わせまとめろ」
伊藤先生の不機嫌そうな声に教室は一瞬ピリつき、各自苗字を書き出していく。
「たしかに、粋頭いい」
祥子はびしっと私に親指を立てて、まだ笑っている。
再び斜め前方にいる天音に目を向けると、彼女は所在なさげにお弁当のおかずをつまんでいた。
じつはこの学校で一番の美少女は、天音だと思っている。
眼鏡で気づかれにくいのかもしれないけど、目の形がとても綺麗で、ショートカットの黒髪はいつ見ても艶やかだ。
育ちの良さが所作から滲み出ていて、人の悪口は絶対に言わないし、汚い下ネタには苦笑するだけ。
そういうところがえりなと祥子にとってはつまらないのかもしれないけれど、私は天音の自分を持っているところが密かに好きだ。
それに、その落ち着いた雰囲気が〝夢花〟に似ているから……、なんだか放っておけない気持ちになる。
席が近かったという理由で、最初は天音と二人で仲良くなり、そのうちえりなと祥子が加わってきて、今の四人組になった。
天音は、ちぐはぐな私達と過ごす時間を、心中ではどんな風に思っているんだろう。
「修学旅行の男女の組み合わせはくじ引きで行う」
普段は親しみやすいけど、怒ると誰もが黙り込むほど怖い伊藤(いとう)先生が、有無を言わさぬ雰囲気で仕切り始めた。
秦野君がすかさず抗議をしていたけれど、秒で却下されている。
かなりどうでもいいと思っていた私は、箱の中に入っているくじを全くかき混ぜずに、上からスッと取った。
紙に書かれていたアルファベットは、〝A〟。
男子もぼちぼち引き終えたところで、「Aの人誰―?」と呼びかけたところ、すぐにひとりが挙手した。
「あ」
思わず声が出てしまい、片手で口を押さえる。
挙手しているのは、昼休みに自分が伝えていた希望通りの人だった。
修学旅行に対してモチベーションゼロな人。そんなの、人生何周もしてる赤沢君くらいしかいない。
あまりに理想的過ぎて、思わず笑いそうになってしまう。
「白石さん、俺も!!」
笑いをこらえていると、急にスポーツ刈りの秦野君がカットインしてきた。
ニヤついていることがバレないように、咄嗟に「あ、よろしく」と淡白に返す。
「おいお前ら、騒いでないで黒板に組み合わせまとめろ」
伊藤先生の不機嫌そうな声に教室は一瞬ピリつき、各自苗字を書き出していく。