電車に乗りながら、アクセス方法を検索する。
本土から一時間弱高速船に乗って、西郷港へ向かわなければならず、船の本数も限られているため時間的に余裕がない。
それでも私は、引き返す気は一ミリもなかった。
あと二日経って月曜になったら、私はたぶん病院から簡単には出られなくなる。
そうなる前に、私は絶対に八雲が見たいと言ってくれた景色を、目に焼き付けたいんだ。
電車を使って船乗り場に着くと、本当にギリギリのタイミングで乗船した。
波に揺られながら、沈みかけている夕日を黙って見つめる。
油井前の洲に行くには港から車で五十分はかかるため、私はあらかじめタクシーの予約をしておいた。
隠岐の島町に辿り着くと、私はすぐにタクシーに向かい、予約情報を伝えて乗り込む。
「油井前の洲までお願いします」
「お嬢さん、ひとりで来たのかい?」
「……はい。どうしても今日、見たくて」
運転手のおじさんはもの珍し気に私を見てきたけれど、静かに車を発進させてくれた。
通り過ぎる景色を見ながら、私はノートを抱いている手にぎゅっと力を込める。
このノートは、八雲の形見だ。絶対最後まで、手離さない。
「着きましたよ。今日は天気も良かったし、綺麗に見えるよ。運がよかったね」
「ありがとうございました」
タクシーから降りると、私は一歩一歩海へ向かって歩く。
ザーンという波音が徐々に近づいてきた。
写真で見た通り、平らな岩棚が海上に現れていて、歩いて海の中に近づくことができそうだ。
「綺麗……」
雲がゆっくり動いて、オレンジ色の夕日が顔を出すと、鏡のようになった海面が、空を映しだしていく。
この世のものとは思えない美しい景色を見て、知らず知らずのうちに涙が頬を伝う。
一歩一歩、岩棚を歩きながら海の中へ進む。
水面を歩いているような感覚で、歩ける限界の場所まで向かうと、ピタッと足を止めた。
水平線へ落ちていく夕日が、私の体を優しく包み込んで、自分の体が、空と海にすーっと溶け込んでいくような感覚になった。
こんなに感動的な景色を、私は、生まれて一度も、見たことがない。
「っ……ふっ、ううっ……」
涙が滲んで、景色の全部が混ざり合った。
このまま泣き続けて、海と空に悲しみを溶かしてしまいたい。
押し寄せる涙が、私の中の感情を剥き出しにしていく。
本土から一時間弱高速船に乗って、西郷港へ向かわなければならず、船の本数も限られているため時間的に余裕がない。
それでも私は、引き返す気は一ミリもなかった。
あと二日経って月曜になったら、私はたぶん病院から簡単には出られなくなる。
そうなる前に、私は絶対に八雲が見たいと言ってくれた景色を、目に焼き付けたいんだ。
電車を使って船乗り場に着くと、本当にギリギリのタイミングで乗船した。
波に揺られながら、沈みかけている夕日を黙って見つめる。
油井前の洲に行くには港から車で五十分はかかるため、私はあらかじめタクシーの予約をしておいた。
隠岐の島町に辿り着くと、私はすぐにタクシーに向かい、予約情報を伝えて乗り込む。
「油井前の洲までお願いします」
「お嬢さん、ひとりで来たのかい?」
「……はい。どうしても今日、見たくて」
運転手のおじさんはもの珍し気に私を見てきたけれど、静かに車を発進させてくれた。
通り過ぎる景色を見ながら、私はノートを抱いている手にぎゅっと力を込める。
このノートは、八雲の形見だ。絶対最後まで、手離さない。
「着きましたよ。今日は天気も良かったし、綺麗に見えるよ。運がよかったね」
「ありがとうございました」
タクシーから降りると、私は一歩一歩海へ向かって歩く。
ザーンという波音が徐々に近づいてきた。
写真で見た通り、平らな岩棚が海上に現れていて、歩いて海の中に近づくことができそうだ。
「綺麗……」
雲がゆっくり動いて、オレンジ色の夕日が顔を出すと、鏡のようになった海面が、空を映しだしていく。
この世のものとは思えない美しい景色を見て、知らず知らずのうちに涙が頬を伝う。
一歩一歩、岩棚を歩きながら海の中へ進む。
水面を歩いているような感覚で、歩ける限界の場所まで向かうと、ピタッと足を止めた。
水平線へ落ちていく夕日が、私の体を優しく包み込んで、自分の体が、空と海にすーっと溶け込んでいくような感覚になった。
こんなに感動的な景色を、私は、生まれて一度も、見たことがない。
「っ……ふっ、ううっ……」
涙が滲んで、景色の全部が混ざり合った。
このまま泣き続けて、海と空に悲しみを溶かしてしまいたい。
押し寄せる涙が、私の中の感情を剥き出しにしていく。