――生まれ変わっても、自ら命を断とうとしているなんて。
　悲しくて悲しくて悲しくて、胸が張り裂けそうだ。千切れそうだ。
　あの子は夢花じゃないと分かっているけど、あの子に生きてほしい。
　もう、誰かが命を諦めようとしているのを見過ごすのは、二度とごめんだ。
「嫌だ!!　待って、お願い、夢花!!」
　しかし、私の呼びかけは、絶望している女の子にはもう届かず、女の子は橋の上にとうとう両足で立ってしまった。
　そしてそのまま、ぼうっと空の一点を見ながら、一歩足を踏み出す。
「いやああああ!!　夢花!!!!」
　その瞬間、絶叫に近い声で泣き叫んだ。
　自分でも信じられないスピードで駆け寄り、彼女の体に両腕を回して、抱き留める。　
　受け止めたと同時に、私の両足も宙に浮いた。　
「粋!!」
　あ。私……、ここで終わるんだ。
　反転していく景色を見ながら、瞬時にそう思った。
　もう少し長く生きるつもりでいたけど、ここで終わりなんだ。
　人生って、本当に呆気ないな……。
　コマ送りで血相を変えた八雲の顔が見えて、私は覚悟を決めて目を閉じようとした。
　しかし――、八雲は足をかけて軽々と橋の上にあがると、私を女の子ごと受け止めた。
　そして、私達は遠心力を使って橋の上に戻され、代わりに、八雲がさっきまで私がいた場所にいる。
「え……」
　何が、起きているの。
　時間にして、たった数秒。
　ザパーン！という激しい水音が聞こえた。
　私の腕の中には抜け殻の様になっている女の子がいて、さっきまで隣にいた八雲はどこにもいない。
　私は女の子を地面に座らせて、すぐに橋の下を覗いた。
「う、う、そ……嘘っ……嘘だ」
　ドクッドクッと、心臓が太鼓のように激しく鼓動して、悲鳴をあげている。
　八雲はあっという間に青にのまれて、もうどこにも見えていない。
　ザーザーという流水音が、ただ残酷に流れているだけ。
　その景色を見て、私はようやく正気に戻った。
「八雲――――!!!!!」
　喉が切れてしまうそうなほど、大きな声で呼んだ。
　周囲の人が異変に気付いて、どんどん橋に集まってくる。
「どうしたんですか！」
　自転車で通りかかった三十代くらいの男性が、泣き叫んでいる私の元へ駆けつけてくれた。
「女の子を助けようとして、今人が落ちたんです……！　た、助けてください……っ」