「ねぇ、八雲。もしいつかね、私がいなくなった後、夢花の生まれ変わりと会ったら……」
「……会ったら?」
 ごめんねって、伝えてほしいな。
 そう言いかけたけれど、夢花に前世の記憶はないわけだし、謝っても意味がないんだ。
 でも、もしも、もう一度会えたなら……、人が人を好きになる気持ちは、どんな形でも美しいと、伝えたい。
 必死に自分を否定して、普通になろうとしていた夢花に、そのままでいいと言いたい。
 後悔に襲われている私の言葉の続きを、歩きながら待ってくれている八雲。
 そうこうしているうちに、大きな川を跨いでいる橋が見えてきた。
 昨日は大雨が降っていたから、川が増水しているだろう。
 あの橋を渡ったら、夢花とのことをもっと八雲に聞いてもらおう。そう決意した。
「え……?」
 しかし、そんな考えは一瞬にしてどこかへ消え去った。
 橋の方へ視線を向けたそのとき、私は信じられない光景を目の当たりにした。
 ランドセルを背負った女の子が、橋に足をかけてのぼろうとしているのだ。
 予想通り川の水位はいつもより高く、落ちたら大人でも命が危ない。
「八雲っ、あの子……!」
「夢花さんだ……」
 助けなきゃ、とすぐに判断した私の横で、八雲が信じられない発言をした。
 その発言で、頭の中に閃光が走って、一瞬で真っ白になる。
「え……、今、何て……」
「夢花さんの生まれ変わりだ、あの子……」
「え……?」
 夢花? あの小さな女の子が、夢花なの?
 八雲は信じられないという様子で、目を見開き立ち尽くしている。
 どう見ても、冗談を言っているようには見えないし、八雲はそんなことを冗談で言う人じゃない。
 ふらふらと虚ろな目で橋をのぼろうとしている少女。
 あの子が、ずっとずっと会いたかった夢花の生まれ変わり……?
 心臓がドクンドクンと跳ねて、過呼吸発作寸前くらい、呼吸が浅くなっている。
「ダメ、やめて、夢花……」
「粋、俺が助けに行くから粋はここで」
「夢花!!!!」
――私は全力で叫んで走って、女の子の元へと向かった。
 八雲の言葉も、何ももう届かない。
 頭の中は彼女を助けたい気持ちで一杯で、胸が張り裂けそうだった。
「粋、待って!!」
 どこを怪我したって構わない。
 絶対にあの子を助ける。絶対にだ。
「ふっ……、うっ……、夢花ぁ……、ダメ!!」