そうか。そんな優しい解釈が、存在してもいいんだ。
 真相は分からないけれど、私はその説を信じたい。心の底からそう思った。
『俺も、粋にとっての光になりたい』
「え……」
『そのときが来たら、最後、光になって会いに行くから』
 光になって、会いに来る。
 それは、途方もない約束に思えた。
 だけど、私は、ぐっと泣かないように踏ん張って、「分かった」と答える。
「天国で迷わないよう、ちゃんと照らしてね、八雲」
 電話越しで、はなを啜る音が微かに聞こえた。
 私は、「泣いてるの?」とは言わなかった。
 何度も生まれ変わってきた八雲とだから、命の短い私でも、こうして未来の約束ができるんだ。
 だから、たとえ八雲がどう思っていようと、八雲にこの能力があってよかったと、私は心から思える。
 


 退屈な授業を終え、放課後になり、私は下駄箱の前でいつものように八雲のことを待っていた。
 どうやら進路の調査書をテキトーに書きすぎて先生に呼び出されてしまったらしい。
 私はマフラーに口元をうずめながら、今まで撮った写真を見返していた。
 八雲はあまり写真を撮りたがらないので、ほとんど不意打ちか隠し撮りみたいな感じだ。
 母親が私の写真を撮っているときって、こんな感じだったのかなと、ひとりで思わずクスッと笑みがこぼれてしまう。
 学校に通えるのは、残すところあと五日間。
 悔いのないように、色んな景色を目に焼き付けていきたい。
 生徒の楽しそうな様子を眺めていると、彼らに限りない未来が広がっていることを、正直羨ましく思ってしまうけれど。
「粋、お待たせ」
「八雲」
 でも私は、今目の前にあることを大切にしよう。
 彼の優しい笑みを見て、すっと心の中にその言葉が降りてきた。
 差し出された手を自然に繋ぎ、私達は校門を出る。
 周りにどう思われようと、もうどうだっていい。
 八雲の体温を感じながら、私達は今日も土手を目指すことにした。
「先生怒ってた?」
「うん。ていうか、テスト結果にむらがあるのも詰められた」
「たしかに、八雲ふり幅凄いもんね」
「本当は余裕で百点取れるんだけど、それだと目立っちゃうしな。手加減するの難しいよ」
 どうしよう。私がもし受験生だったら、今の発言には心底腹が立っていたかもしれない。