わりとカースト上位的なグループにいることはすぐに分かったけれど、いつも友人の話をうわの空で聞いている気がする。
 心底どうでもよさそうなあの表情が、人生を何周もしている自分と重なり、少し気になっていたのだ。
 そんな彼女と昨日電車で一緒に居合わせたのは、本当にただの偶然だった。
「八雲、白石と話したことあんの?」
 秦野の質問に、俺は「いや、一回しかない」と答える。
 それを聞いて秦野は安心したように「だよなー」と笑った。

 放課後のホームルームにて。修学旅行のチーム分けの話になり、秦野はずっとそわそわしていたけれど、ランダムにくじ引きで決められることになった。
「先生、隣のクラスは話し合いって聞きましたけど」
 秦野がめげずに切り込むも、若い男性教師は「お前ら、課外学習のチーム分けで揉めてたから却下」と冷たく言い放つ。
 課外学習は、俺が転校してくる前にあったらしいからその時のことは知らないけど、とにかく教師の決意は固かった。
 順番が来たのでテキトーにくじを引くと、四つ折りにされた紙には〝A〟と表記されていた。
「Aの人誰―?」
 女子の呼びかけに、俺は振り向いてそっと挙手する。
 Aの紙を持って呼びかけていたのは、白石だった。
「あ」
 白石が小さな声をあげて、驚いた顔をする。
 数秒目を合わせたまま固まっていると、秦野が元気よく「白石さん、俺も!!」と間に入ってきた。
 白石はパッと目を逸らして、秦野に「あ、よろしく」と淡白に返している。
 その後各チーム全員の振り分けが完了し、ホームルームは終わった。
「ちょちょ、八雲もう帰んの?」
「秦野、はしゃぎすぎて嫌われんなよ」
「うっせーわ!」
 秦野をテキトーにあしらいながら荷物をまとめていると、スマホにメッセージが届いた。
【一緒だね】
 白石から届いたのは、たった一言、それだけ。
 ふと視線を上げるも、白石は友人と楽しく話している様子で、全くこっちを見ていない。
 教室では絶対に混ざり合うことのない彼女が、昨日あんなに必死になって訴えかけてきた。あのときの様子が、再び頭の中に浮かんでくる。
 俺は記憶の連鎖を終わらせるために。
 彼女は、未練がある人の生まれ変わりを探すために。
 お互いに利害が一致し条件をのんだように思えるけれど、実際は彼女の方がかなり不利だ。