「あとは、部活名だね」
「もちろん未確認生物研究部で──」
「それはない」
「それだけは絶対に嫌」

 十鳥先生の問いに僕がそう答えるも、2人が間髪入れずに否定してきた。

「なんでよ!」
「ネーミングセンスがないよね」
「私ももう少し考えた方がいいと思う」
「そんなことないよ!未確認生物研究部だよ?『未研』っていう呼びやすい略称もある!」
「呼びやすいか?」
「そもそも未研もダサい」

 すごい叩かれる。踏んだり蹴ったりじゃないか。僕は助けを求めるように十鳥先生へ目を向ける。

「十鳥先生はどう思います?」
「うーん、ダサいかはともかく、名前がそれだと未確認生物しか研究しないってなっちゃいそうだよね」
「ほら」
「そうだぞ有真、ダサいんだぞ」
「十鳥先生はダサいって言ってないから!」
「いや、うん…まぁ…ははは」

 え、なにその反応。それダサいって間接的に言ってるのと同じじゃないですか。悲しい。
 しかし、冗談交じりに悲しんでる暇ではない。みんなが納得する名前を決めて、生徒会長に渡さなくちゃ。

「わ、わかりました。変えましょう!ただせめて生き物の研究はしたいからそれは名前に組み込みたい!」

 却下された悔しさを飲み込みながら泣く泣く改名を受け入れつつも、譲れない部分を強く主張する。

「俺はもっとミステリアスな感じがいいな」
「先生的には対外向けになにをやってるかわかりやすいやつかなぁ」

 翔も先生も部名に思いはあるようだ。

「…不思議」

 不知火さんが口元に手を当て、なにか浮かんだように声を発した。

「飼育や保護を通して生き物の不思議を研究していく部活という意味で『生物不思議研究部』とかどうでしょう?」
「お、いいかも!」
「さすが不知火さん。わかりやすいしいいわね」
「研究って文字も入ってるし、『不思研』って略せるのもいいね!」
「いいのか、それは。有真はなにかと略称にこだわるな」

 不知火さんが考案した部名。『生物不思議研究部』先生含めて、満場一致で同意した。

「不知火さんってセンスあるんだな」
「そ、そうかな?」
「赤翼くんとは大違いだね」
「ちょっと!そんな大差ないですよね?」
「いや、雲泥の差だろ」
「赤翼くん、ネーミングするコツとか私がいつか教えてあげよっか?」

 僕部長なのに幸先悪くない!?

「よし、じゃあ部名は決定っと」

 そんな僕を尻目に十鳥先生が申請書に記入する。大人っぽい丁寧な文字で書かれた『生物不思議研究部』の文字。僕ら3人はそれを期待に満ちた目で見つめる。
 これから僕たちは部活動していくんだ。そう思うとワクワクが止まらなかった。

「じゃあ3人とも、これからよろしくね」
「「「よろしくお願いします!」」」

 僕ら3人、自然と声が重なって先生にそう答えた。『生物不思議研究部』の活動が始まる。職員室に差し込む夏の太陽の光が僕たちを祝福しているように感じた。