「……馬鹿な女だな、旦那だけ置いて逃げればいいものを」

けたたましいサイレンの音と、燃え盛る家を眺めながら、吐き捨てるように呟いた言葉に、すぐ後ろから返答がくる。

「いつから千夏は、俺の仕事に手をつけるようになったんだ?」

茂みから、長袖の黒のシャツに黒いズボン姿の花灯が、姿を現した。

「何?お前まで僕にGPSつけてんの?」

スーツのネクタイを、雑に緩めると、長身の千夏は、同じく長身の花灯に目線を、合わせるように目の前に立った。

「他にもつけられてんの?」

「ま、僕のは、飼い猫だけどね」

千夏の返答に、ふぅんと、どうでも良さそうに花灯が鼻を鳴らした。

「俺は、千夏が、何処で何しようが、基本的に干渉はしない。でも花火をどう使うかは、客次第。お前には、関係ないし、お前に何も言う権利は、ない。今後は、勝手に斡旋するな」