バチバチッと音がして、コンロから火花があがると、辺りを白い煙が、充満してビジョンを映し出していく。

(此処、どこ?)

見慣れない洒落た内装に、ガラスケースには様々なデザインの指輪が、並んでいる。

「今日、妻の誕生日なんです」

(この声……)

和樹は、店員から、リボンのかけられた小さな箱を受け取ると、鞄の中に、大事そうに仕舞った。 

(今日って……そうだ、私の誕生日)

亜由は、口元を覆った。だから、和樹は、私の誕生日を、覚えていてくれて、プレゼント片手に早く帰ってきてくれたんだ。和樹の鞄の中のあの紙袋の中身は……。

溢れた涙は、嬉しいのか哀しいのか、もはや、わからない。何が正しいのか、何が間違っているのかも、もう理解しようと思っても遅い。

あたりを見渡して、和樹の姿を探すが、白い煙で、和樹の姿は確認できない。

そして、ふいにビジョンは、切り替わり、3年前の結婚式の二人が映し出される。

沢山の祝福の、薔薇の花びらのシャワーと沢山の人達からの拍手に包まれて、牧師の前で永遠の愛を誓っている二人が居る。

ウェディングドレス姿の亜由と、タキシード姿の和樹が幸せそうに、笑い合うビジョンが映し出されていた。