ーーーーいつからだろうか。

銀行マンの和樹は、職場での上司からのパワハラと激務から、家に帰れば、当たり散らすようになった。

はじめは、物に当たっていたが、やがて、その矛先は自身に向いた。

暴力を振るった後は、決まって、『愛してる』、そう和樹は、口にする。

「変わったのは、お前だろっ!」

目を血走らせた和樹は、もう自分の知っている和樹じゃない。こんな風に、自分を痛めつける和樹は、和樹じゃない。

ーーーー私の愛した和樹じゃない。

「和樹……ごめんね……支えてあげられなくて」

和樹の瞳が、僅かに見開かれる。

「もう……限界なの……死んで……」

亜由は、火をつけたままの、天ぷら鍋の下のコンロに向かって、花火を全部差し込んだ。