「痛っ……和樹?」

「今日は、どこの男に腰振ってたんだ?」

「何……言ってる、の……?」

和樹は、スマホを取り出した。指先で操作すると、無表情で、その画面を亜由に見せた。

ーーーーGPSアプリだ。

「それ……」

身体が、カタカタと震えます。

「お前のスマホと連動するようになってんだよ、昼間、どこ行ってた?」

「ぐっ……」

答えるより、先に蹴られた腹部を抱えて、亜由は痛みを堪えた。

言えるわけない。昼間は花火屋の元に、花火を受け取りに行っていたのだから。

亜由は、転がったまま、左を向けば、玉ねぎを入れたボックスが、見えた。

「お前、結婚してから変わったよな」

和樹が、ネクタイを緩めながら、ワイシャツを脱ぎ捨てた。その隙に亜由は、紙袋から花火を鷲掴みにすると、後ろ手に隠して、ゆっくりと立ち上がった。

「もうやめてっ!」

「は?亜由、何言ってんの?」

「……私は、和樹と結婚してから、浮気なんて誰とも一度たりともしてない。……変わったのは……和樹だよっ!」

和樹とは、恋愛結婚だった。結婚前の和樹は優しく、この人ならと幸せでありきたりな家庭が築ける。そう信じて疑わなかった。