何度も、花火屋からのメールを確認し、手順も頭に入れている。

花火屋からの紙袋には、スパーク花火や線香花火も入っていたが、今夜、使うのは、意識喪失効果のる、ススキ花火一本だ。これに火をつけて和樹の意識を喪失させる。

「亜由、今日の飯何？」

スマホを無表情で眺めながら、和樹が、キッチンをやってきた。その冷たい瞳に背筋が凍りそうになる。

亜由は、平静を装って、天ぷら用の鍋に油を流し入れて火をつける。

「和樹の好きな、唐揚げだよ」

答えた亜由の後ろから、和樹に、抱きしめられる。

「今日何してたの？」

「えっと……買い物に行った位で、あとは、家に居たよ」


ーーーーその瞬間だった。穏やかな和樹の顔は、一瞬で、憎悪を秘める。亜由の左の頬が、パンッと鳴って、その衝撃的で、気づけばシンク下に、転がっていた。