女性が警察署を出て100メートルほど歩いた所で、千夏は声を掛けた。
「あの、良かったら、相談のりますよ」
千夏は、財布に入れてある、名刺を取り出すと、女性に差し出した。
そして、千夏は、人目につかないように、ビルとビルの隙間に、するりと入ると、女性を手招きした。
「え?……蓮野千夏……さん、刑事さん?」
女性は、千夏の後に続いてビルの隙間に入ると、名刺と千夏の顔を見ながら、瞬きを繰り返している。
「ま、刑事やってます。いまから僕の言うこと、内緒にできます?」
「え?」
「……居なくなってほしいでしょ?ご主人に」
千夏は、人差し指を立てて、口元に当てると、ふわりと微笑んだ。