「シャワー浴びてくるね」

行為を終えた、和樹が微笑みながら、アザだらけの亜由の身体を裸のまま、もう一度抱きしめてから、シャワールームへと歩いていく。

亜由は、シャワーの水音が聞こえてきたのを確認してから、手帳型のスマホケースを開いて、メールを確認する。

『審査基準に到達いたしました。アカウントの鍵はーーーー』 

すぐさま、アカウントのコードを入力して、花火屋にメールを送信した。

「これで……此処から……」

亜由は、震える掌でスマホを握りしめながら、手帳型のスマホのケースに入れてある名刺を取り出した。名刺には、

『警視庁 刑事第一課 強行犯係 警部補 蓮野千夏 』

と印字されている。あの時、偶然出会った刑事から貰った名刺だ。

亜由は、そっと名刺をスマホケースに隠すと、シャワールームの扉の開く音と共にソファーに寝転んで、瞳を閉じた。

今の自分が置かれている苦痛と痛みしか伴わない結婚生活も、傷だらけの心と身体も、今から隣に寝転ぶ和樹からも、全てから目を逸らすように、固く瞳を閉じて、暗闇に溶けていくように。